第377話なほめでたきこと(6)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


里の屋敷にいる時は、普通に行列を見るだけでは物足りなくて、上賀茂神社まで出向いて見物したときもあります。

大きな木の下に車を停めて見ていると、松明の煙が漂ってきて、氷影を受けた半臂の緒や衣装の光沢が、日中に見るよりは一層美しいのです。

御手洗川にかけた橋板を踏み鳴らし、声を合わせながら歌い舞うのも、本当に華麗で美しい上に、水のサラサラと流れる音や妙なる笛の音が舞人の歌に重なるので、賀茂の大神様もさぞ、素晴らしいとお思いになることでしょう。

頭の中将と呼ばれた方は、毎年舞人に選ばれ、それは素晴らしいと心底思っていたのですが、亡くなられたということです。

上賀茂神社の橋の下に、その霊がおられるという噂を聞くと、禍々しさを感じます。

私としては、そこまでの思い入れはないけれど、確かにこのお祭りの御神楽が素晴らしいということは、絶対に忘れられないと思うのです。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :確かに文だけでも、素晴らしさが伝わってきます。

清少納言先生:神秘的でもあり、華麗でもあり。

舞夢    :頭の中将という方も。そこまで評判になるとは、大したものですね。

清少納言先生:実際は霊がそこにいるとかいないとかではなくて、人々の記憶に残ったのでしょうね。


なほめでたきこと(7)に続く。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る