第351話故殿の御ために、月ごとの十日(2)

供養が終了となって、酒の席が始まり、詩を声を出して読むようになっていると、頭の中将斉信様が、「月秋と期して身いづくか」という歌を吟誦なさった様子が、とても素晴らしく感じられました。

斉信様は、何故、このような供養の席に相ふさわしい詩を、思いついたのでしょうか。

私(清少納言)が、中宮定子様の御前に、人をかきわけ参上すると、中宮様は御座所をお立ちになられています。

中宮様は

「斉信は、素晴らしい朗詠でしたね、おそらく今日の供養のために、しっかりと準備をして、誦じたのでしょう」

とおっしゃります。

私は

「私も、それを申し上げようと思いまして、物見などは途中にして、参上いたしました」

と申し上げると

中宮様は

「まして、あなたの感激もより一層のことでしょう」

と、おっしゃられます。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :「月秋と期して身いづくか」の詩とは?

清少納言先生:「月は秋となり美しく輝くけれど、その月を愛でた人は今どこに」和漢朗詠集にも、見える詩です。

舞夢    :確かに九月の時期、追善供養としては、素晴らしいと思います。


故殿の御ために、月ごとの十日(3)に続く。

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