第352話故殿の御ために、月ごとの十日(3)

頭の中将斉信様が、特別に私をお呼びになりました。

そして

「清少納言様は、何故、私と本当に親密になってくれないのですか」

「あなたが私を憎んではいないということがわかっているので、それが不思議でしかたがないのです」

「これほど何年にも渡るおつきあいしている関係なのに、このまま結ばれずに終わりになるはずもない」

「殿上の間の明け暮れに、あなたが姿を見せなくなったとしたら、私は何を思い出に生きていけばいいのか、さっぱりわかりません」

とおっしゃります。

私(清少納言)は

「はい、斉信様と深い関係になることは、それほど難しいことではありません」

「けれど、そうなってしまうと、帝の御前などで、あなた様を褒め申せなくなると思いまして、それが本当に残念なことになるのです」

「私は、私の役目のようにして、帝の御前であなた様を褒め申しているのですから、そうなると、どうしてあなた様の思い人になれるのでしょうか」

「これからも、ただの親しい女房と思っていてください」

「自分の恋する人を褒め上げるなどという他人の思惑も気になりますので、引目も感じて申し上げにくくなるのです」

と応えました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :なかなか、難しいですね。

清少納言先生:女房の世界も、何があるかわかりません、「好きならばこそ」です。

舞夢    :少し距離を置いて、長いおつきあいですか。

清少納言先生:そんなものかなあ・・・


故殿の御ために、月ごとの十日(4)に続く。

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