第269話雨のうちはへ降るころ(1)

清少納言先生:今日から、雨が降り続いていた時の話になります。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


雨がずっと降り続いています。

そして今日も降っているので、帝からのお使いとして、式部丞信経が中宮様の御前に参上なされました。

私(清少納言)が、普段通りに敷物を差し出すと、信経様はそれを普段よりも遠くに押しやって座っておられます。

私は不思議に思って

「一体、どなたがお座りになるために、押しやっているのですか」

とお聞きすると

信経様は、笑顔で

「いや、このような雨降りの日ですと、敷物を使ったりすると、足跡が付いてみたり、本当に具合が悪く、せっかくの敷物を汚してしまうのです」

と、おっしゃります。

私は

「いや、そういうことではなくて、せんぞく(洗足)料になるのですから」

と、言うのですが

信経様は

「今のせんぞく料のお考えは、清少納言様が考え出した歌の句ではありませんよ、私が足跡のことを口に出さなかったら、清少納言様はそんなことを言わなかったと想いますよ」

と何度も繰り返して言うので、なかなか面白い。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :まず、信経様は、式部の丞ですから三等官で。陸奥守藤原為長様の御子息ですね。

清少納言先生:はい、雨の降り続く日に、帝からのお使いで参られました。

舞夢    :せんぞくとは?

清少納言先生:はい、毛でできた敷物をせんぞくと言いまして、偶然足を洗うほうの洗足と重なってしまいました。


雨のうちはへ降るころ(2)に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る