第237話ねたきもの(1)

清少納言先生:今日からねたきもののお話になります。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


嫌気がさすもの。

手紙などを他人のところへ、こちらから届けた時、あるいは返事を届けた時でも、書いて届けた後で、一文字、二文字書き直したくなった時。

縫い物を大急ぎでしている時に、上手に縫ったはずなのに、針を引き抜いて見ると、最初に糸尻を結んでいなかったとか、裏と表を逆に縫ってしまった時は、本当に嫌気がさします。

中宮様が、お父上の道隆様のお屋敷、つまり東三条南院におられた頃の話です。

中宮様から

「これは大急ぎのお仕事になります、全員で時間をかけずに縫って差し上げてほしい」と縫い物を渡されました。

そういう話なので、全員が南面に集まって、御衣の身ごろを片側ずつ、誰が早く縫うのかと、近くでも向かい合うこともしないで、もう隠すように縫っている様子は、常軌を逸したように思えます。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :これは、わかりやすいですねえ。

清少納言先生:隠すこともないのだけど、ついついね。

舞夢    :それぞれライバル意識でしょうか。

清少納言先生:まあ、それはありますね。


これも、女房連中の実情がわかって面白い。

人間は、いつでも、同じような行動をとる。

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