第205話職の御曹司におはしますころ(7)

さて、雪山を造った日に式部の丞忠隆様が中宮様のところへお出でになりました。

褥を差し出しまして、よもやま話をしておりますと、

忠隆様は

「今日は皆さん、あちらこちらで雪山を造っておられますね」

「帝のお近くの中庭にもお造りになり、他には東宮坊と弘徽殿、京極殿でもお造りになられました」などとお話になるので

私(清少納言)は


ここにのみ めづらしと見る 雪の山 所々に ふりにけるかな


と詠み、隣にいた女房に言わせます。


忠隆様は何度も首を傾げ

「返歌を下手に詠めません、拙い歌をお返しすると笑いものになります、これは帝の前でご披露しましよう」と言って戻ってしまった。


忠隆様は和歌が大変好きなお方なのに、何故返歌も詠まずあのようなことをおっしゃるのか、理由がわかりません。

そのことが中宮様のお耳に入り、

中宮様は

「まあ上手に和歌を詠んだので、やりとりよりは帝の前でと思ったのでしょう」

と、おっしゃられる。


職の御曹司におはしますころ(8)に続く。

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