第73話七月ばかりいみじう暑ければ(5)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


枕元にある女君の扇を、男君は腰を浮かせてかきよせようとするのだけど、その時男君がすごく近寄って来るのではと思い、女君はドキドキしてしまうのでしょうか、すっと身体をずり下げています。

男君は、扇を手に、「冷たい態度ですね」と皮肉まじりに言うのですが、そんな恨み言を言っているうちに、日は高くなるし、女房たちの声も聞こえるでしょうし、朝霧の切れ間が見えるようになり、早く書かねばならない前の女君への後朝の文が遅くなったのが気にかかるのでしょうか。

先に帰った男君が、いつの間にか書いていた後朝の文を、露が残ったまま折った萩の枝に添えてよこしたのですが、他の男君がいるので、使いの者は、なかなか差し出すことができません。

その香をたきしめた文が、本当に濃く香り心を惹かれます。

結局、後から来た男君は立ち上がって出て行かれました。

その男君にしても、自分が残してきた女君のところに、自分がしたように別の男君が来ているのだろうかと、自ずと想像しているのでしょうか。

男君にしては、それも、さぞかし興味深いことなのでしょうね。


清少納言先生:お疲れ様でした。

舞夢    :お互いさまと言うのでしょうか、それにしても、すごい世界ですね。

清少納言先生:まあ、それが普通の世界でしたけれど。



遠い先祖かもしれないけれど・・・何とも言いようがない。

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