第64話小白河といふ所は(5)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


遅れてきた女車が、その車を立てる場所もなかったので、池に近づけて立ててあるのを、中納言の君がご覧になって、実方の君に「あいさつの言葉を、この場で上手に言えるような者を一人お願いします」と言い、使いの者を通じて御呼びになると、どういう人かわからないけれど、実方の君が御選びになり、連れてこられました。

「さて、どのような言い方がよろしいのでしょうか」などと、中納言の君の周りの方々がご相談し、届けた言葉があるようですが、私の所へは聞こえません。

使いの者が、本当に神経を使いながら、女車の近くに歩み寄るのを、上手に出来るだろうかなどと心配をし、他方では使いの様子を笑って見ていらっしゃる。

使いの者が女車の後方に立ち、話しかけているようです。

永く立っているので、「相手の女君が歌でも詠んでいるのでしょうか、兵衛の佐よ、返しの歌を心掛けておくように」などとお笑いになり、早く女車からの返事を聞きたいと、居合わせる者が全員、年輩の人や上達部までが女車の方に視線を向けておいででした。

全く関係のない人までが、女車に視線を向けていたのが興味深く感じられました。


清少納言先生:はい、お疲れ様です。

舞夢    :遅く到着したばかりに、注目されてしまったのですね。

清少納言先生:お使いの人も気苦労です。

舞夢    :歌を準備しろなどと言われるのも、大変です。

清少納言先生:言う方は、お気楽なんですけれどね。


清少納言先生は、本当は自分が歌の返事をしたかったのかもしれない。

それで、こういう、ありえる風景を記録したのではないかと思う。

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