第28話すさまじきもの(1)

清少納言先生:今日は、すさまじきものです。

舞夢    :では、現代語訳します。


面目を失うもの。

昼間に吠える犬

春の網代

三月四月の紅梅の衣

牛が死んでしまった牛飼

産まれたばかりの子供が死んでしまった産屋

火を起こさない角火鉢や知火炉

博士の家で女子ばかりが生まれてしまうこと

星のめぐりが悪いため、方違えに行っても、もてなしてもらえない所

その日が節分の場合は、いっそう興ざめになります。


清少納言先生:はい、これは解説します。舞夢君の時代とは違うから。

舞夢    :助かります。

清少納言先生:犬は、夜間の番に使うので、昼間あの声で吠えられても面目なし。

       網代というのは、川中に杭を打って竹組みをして上流から下がって来

       る魚を取る仕掛だけど、水量のない晩秋から冬が本番、春は興ざめ。

       三月四月は、旧暦だと晩春初夏、紅梅の衣は季節外れ。

       牛とか産屋とか火を起こさない話は、当たり前すぎて省略します。

       博士というのは、文章道でも明経道でも最高の栄誉の地位です。

       学問は男子が携わる決めがあって、女子は後継できないから興ざめ。

       方違えの場合は、行った先でもてなしてくれて当たり前。

       それがなされないので、興ざめ、節分の場合はなおさらです。

舞夢    :ようするに、季節はずれとか、場違いとか、ふさわしくない興ざめ。

清少納言先生:うん、中には、それぞれ事情があるんだからってね、文句を言う人も

       いるけれど、単純に書いただけです。

舞夢    :感情論とか同情は抜きにして、美観だけで書いたと・・・

清少納言先生:少し書き方はきつかったかもしれない。


清少納言先生は、そのまま消えた。

ただ、途中から気がついた。

「すさまじ」は、「をかし」の対語で、時季外れ、場違い、面目なしを意味する。

先生は、「興ざめ」とも表現していたけれど、「面目を失う」という意味が強いのではないか。

清少納言先生の書き方は、確かに唐突だけれど、他人が言うほど冷酷な人間ではない。




       

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