第9話 久野文香の起
起。
俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。
「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」
と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。そんな俺の前に、レンタル福の神という、偉そうなでキチガイな女が現れ、不幸を幸福に変えるという。俺は、福の神に憑りつかれてしまった。
承。
「新しい転校生を紹介する。」
「久野文香です。よろしくお願いします。」
「久野とりあえず、リエ・・・。」
「クスクスクス。」
「リエさんじゃなかった、光くんの横の空いてる席に座ろうか。」
「はい。わかりました。」
その転校生は、いきなり現れて、僕の方に歩いてきて、
「私は久野文香です。よろしく。」
「俺は光・・・リエ、よろしく。」
挨拶をして、俺の隣の席に座った。
転。
「リエって、素敵な名前ね。」
「え!?」
「そうよ、あなただけの名前、オンリーネームって関じがする。」
「そうかい?」
「そうよ。」
「俺は嫌いなんだ。男のくせに女みたいな名前で、さっきも先生が「リエさん。」って呼び間違われるだけで、クラスの連中に笑われる。リエは呪われた名前なんだ。」
「クス。そんなの気にしているのは、本人だけだわ。笑いのネタとして笑っているだけで、誰もあなたの女の子みたいな名前に興味がないもの。」
「そんなもん?」
「そんなもんよ。」
「そんなレベルでバカにされて笑われているなんて、なんか滅入るな・・・。」
俺はぐったりした気分になった。
結。
「私はリエって名前、好きよ。」
「え!?」
「久野文香なんて、どこにでもありそうな名前で嫌になるわ。」
「そうかな? 普通で目立たなくて、いい名前じゃないか?」
「普通だから、おもしろくないのよ?」
「お、おもしろいとか、おもしろくないとか、名前って、そんな物差しではかるものかな?」
「リエって、私にとっては、憧れる存在だわ。」
「憧れって・・・。」
「リエって、彼女はいるの?」
「な!? い、いない。女みたいな名前の男なんかと付き合う女なんかいるもんか!」
「よかった! じゃあ、私が立候補してあげる。」
「え!?」
この日、福の神の福ちゃんは、「福の神の研修に行って来る。」と去って行ったが、不幸の塊の俺に、久野文香ちゃんという、幸運の女神が舞い降りた。
つづく。
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