第4話 起承転結の結
起。
俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。
「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」
と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。そんな俺の前に、レンタル福の神という、偉そうなでキチガイな女が現れ、不幸を幸福に変えるという。俺は、福の神に憑りつかれてしまった。
承。
「福の神だと!? 俺の不幸を幸福に変えるだと!? バカバカしい。」
「仕方ないだろう、私は福の神なんだから。」
「そんな話が信じられるか!」
「貴様が信じる信じないはどうでもいい。」
「な?」
「重要なことは、私が貴様に憑りついているということが重要なのだ。」
「なに!?」
「もし私がいなくなれば、貴様は襲い掛かって来る不幸に押し潰されて、死んでしまうだろう。だから、今年の不幸12に選ばれたのだ。私が貴様に憑りついている限り、貴様の不幸は幸福に変わるだろう。」
「そ、そんなこと信じられるか!?」
「不幸の上に、頭も弱いのか・・・本当に不幸の塊だな。」
「うるさい! ほっとけ!」
福の神の女は、ヤレヤレといった顔で、首を横に振り、手をあげてお手上げアピールをする。
転。
「わかった、私がどれだけ、ありがたい福の神様か、教え込む必要があるようだな。」
「なにをする気だ?」
「貴様、これから女子更衣室に行け。」
「なに!? 俺は覗きの趣味はないぞ!?」
「普通なら、変態! 痴漢! とボコボコにされるだろうが、私が憑りついていれば別だ。貴様の愚行も正当化される。」
「そんなバカなことが・・・、しかし、女子更衣室・・・男のロマンだ。」
「ホレホレ、いいことがやってきただろう。」
「こ、今回だけだぞ、俺は別に好き好んで、行くわけじゃないからな。」
「おい、その割には、顔がにやけてるぞ。」
「そうですか。エヘヘ。」
俺と福の神は、女子更衣室の前までやって来た。
「憑依!」
福の神は、俺の頭に憑りついた。後頭部に胸が当たる感触が、微妙に嬉しかった。
「本当に大丈夫なんだな?」
「安心しろ。私が貴様にくっついている間は、貴様は無敵だ。」
「いくぞ!」
「いけ!」
ガチャっと女子更衣室の扉を開けた。
結。
「キャアアア!!!」
女子更衣室の中は、女子高生が着替えの最中だった。男として非常に良いモノが見れた。が、女子の悲鳴を聞き、死を覚悟した。
「ご、ごめんなさい!?」
「キャアアア!!! ゴキブリ!!!」
「え!?」
「リエちゃん、ゴキブリを退治して!」
「は、はい!」
悲鳴は、女子更衣室に入って来た俺にではなく、女子更衣室に現れたゴキブリに向けられたものだった。俺は、パン! とゴキブリを一撃で倒した。
「リエちゃん、ありがとう。」
「ゴキブリを倒せるの、カッコイイ。」
「そ、そうかな。アハハハ。」
ゴキブリを倒した俺は、女子更衣室で裸や下着の女性に囲まれて幸せだった。
「な、私の言ったとおりだろ?」
「そ、そうか?」
「貴様の不幸は、ゴキブリに転換され、露出した女子高生にチヤホヤされる、いいことがあっただろう? どうだ? 福の神を信じる気になったか?」
「誰が信じるか! これも俺の日頃の人気のたまものに違いない! やっと俺の良さが女子に認められたんだ!」
「・・・あっそう。私を否定する奴は、死ねばいい。」
そう言うと福の神は無表情で、俺の頭の上から去って行った。
「キャアアア!!! 変態!!! 痴漢よ!!!」
「え!?」
「キャアアア!!! 覗き!!!」
「ええ! 俺はゴキブリを倒したじゃないか?」
「問答無用!!!」
「そんな!?」
「女の名前してるからって、女子更衣室に入って来るな!!!」
「た、助けて! ギャアアアア!!!」
こうして俺は、怒り心頭の女子どもにボコボコにされ、生と死の狭間を彷徨い。女子更衣室から出てくる頃には、福の神のありがたみが身に染みていた。
「私のありがたみが分かったか?」
「はい。お、お世話になります。」
「分かれば、よろしい。アハハハ。」
こうして俺は、福の神の存在を信じ、不可思議な共同生活を送ることになった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。