一つだけ宣伝がない寂れた、実に寂れた黒字は中々目に触れにくい。
しかしながら、その気取らぬ態度は安っぽいキャッチフレーズばかりを書き晒す自分を非難するかのごとくであった。
そこに目を惹かれ、硬派、見せかけの硬派、気取りとも思われるような姿勢は死の充足感に満ちた作品内容によって見事に覆されたと言える。
まるで、それは疲れ切った我々を移すかのごとく作風は古風、今の作家に感じられない、自らへの批判、不満、諦念を感じさせると言えるだろう。
勿論、作者がこれを意図したのか意図していないのかは知らないが、私はそう感じたし、何か欠けたもの、意図して欠かされたものを感じ取りながらも大層満足できる作品であると考える。