プロローグ〜出会い〜

 太陽の光が木々の間から差し込み、辺りは神秘さをかもし出している。まるで、自然の空気がそうさせているかのように。

 そんな空気と同化するかのように、広けた場所にポツリと立つ1人の少女がいた。光に反射する茶色のクセのない長い髪を横に1つに結び、辺りを漂う風を感じていた。

 しかし、少女はまだ幼い。

「この世界に・・・光はないのかな」

 ポツリと呟いた。けれど、幼い少女にはあまりにも残酷で、まだたった7年しか生きていないというのにこの世界に絶望している。

 その瞳に光は宿っておらず、ただぼーっと木々を眺めるのみ。

 その世界しか知らないかのように、当然と見つめていた。

 毎日が同じことの繰り返し。しかし、それは命がけの生活だった。

 一歩でも外に出れば、少女はたちまち殺されてしまう。

「王族を滅ぼす種」、「神力の消失」の象徴だと、生まれた瞬間からその運命を背負い生きてきた少女。それは己の中に密かに佇む”神力”のせいだった。

 書物の中でしか外の世界を知る事ができない少女。

 そんなある日、少女は人生で初めての出会いをする。


「こんなところでどうされた」


 初めて見た世界。

 自分の運命を単に受け入れてきただけの少女にとって、初めて運命に逆らいたいと思った瞬間だった。

 漆黒の黒髪に、白の動きやすそうな中華服を着ている少年は少女に手を差し伸べた。

「可愛らしいお方だ。俺は月 秀斗。あなたは?」

 優しい声に誘われて、少女は家族以外で初めて口を開いた。

「私は・・・風華」


 その瞬間、少女の運命が動き出した。

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