儚石

Silk tree

プロローグ

———開けてはいけなかった、パンドラの匣。その最後には、希望が残っていた。


人は皆、心の奥底に願望を持っている。いつまでたっても叶えられない、誰にも言えないような夢だってある。

誰かに認められたい、一番に想われたい、そんな、「自分」だけではどうにもならないことだって、望んでしまうのだ。

どうにもならない、そう諦めながら、心の底では、ちょっとした奇跡で明日叶ってはいやしないかと、そっと願って眠りにつく。毎日、人はそうやって、折り合いをつけて生きている。


あれ、はきっと触れてはいけない物だったんだろう。開けてはいけない、パンドラの匣。でも、僕らは、それを開けきったんだ———

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