地球の大忘年会

ハルスカ

地球の大忘年会

 地球くんが言いました。

「みんな!この1天間はどうだったかい。」

 地球では「天」という単位が、人間界でいう1年にあたる周期のことです。

「いろんなことがあったけれど、なんだかとてもあっという間だった気もするねえ。」

 地球くんはしみじみと頷きました。1天は地球が生まれて海があふれて木や草が茂ったあと、海の動物と地上の動物が自由に踊ってやがてゆっくりと眠りにつくまでの間です。つまり一つの星の一生。

「最初はどうなるかと思ったよね。とても大きなエネルギーが好き勝手しちゃってさ天気も悪いし、僕は心配だったんだよ。」

 でも…、と懐かしそうに細める目には、その時のことが鮮明に写っているかのようです。

「なんだかんだみんな落ち着いてよかったよ。」

 クスクスと楽しそうに笑う地球くん。きっと地球くんには私たちにとって何億年むかしのことも、ついこの間のことのようなのでしょうね。

 地球くんの中で起きたことは、もちろん地球くんはみんな知っています。森の中のある2匹のコグマがとても仲良しなことや、砂漠のあるサボテンがやっとの思いで美しい花を咲かせた瞬間。心に深い傷を負った少女が今日も海岸でひっそりと膝を抱えていることや、生まれ故郷が平和ではない青年の必死に生きる姿。なんでも、なんだって知っています。でも…一つだけ地球くんにも知らないことがあります。

 それは自分がいつ、どうやって生まれたかということ。広い宇宙の中で地球くんはどうすれば自分が誕生できたのかを知りません。また生まれることができるのかどうかも、わからないのです。

 さっきまで快調に1天のことを話していた地球くんが少し寂しそうです。

「本当に楽しかったなあ。そりゃあ良いことばかりじゃなかったけど、全部含めてまるごと僕の素敵な思い出だよ。」

 1天が終わる時が近づいています。辺りはとても静かで、みんな長い眠りについたのでしょう。

「ああ、そろそろ時間だね。僕自身も1天が終わった後どうなるかわかわからないんだけど、もし神様がいて運命のいたずらがあるなら、また会いたいものだね。」

 やがて地球くんもゆっくりと目を閉じました。


 それからどのくらいの時が過ぎたのでしょうか。とても人間の時間の長さでは計れないほどの膨大な時が、誰にも知られることなく流れていきました。

 ある時ひとつの惑星が目を覚ましました。

「ん、んんぅ。ふあ〜。あれ?僕は夢を見ていたと思ったんだけど、忘れちゃったな。思い出せないや。」

 その惑星には、ただ大きなエネルギーが渦巻いているだけでした。

「こらこら君たち、そうやって好き勝手ばかりして……。(また?おかしいな僕はこれを知っている気がする。確か前にも同じようなことがあったんじゃないか?)」








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地球の大忘年会 ハルスカ @afm41x

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