第8話 廃部の危機!
「廃部の危機だ!」
今日も今日とて部活の日。
場所は物理実験室。
春の爽やかな空気の中、緋鞠は千歳を見ながら声をあげた。
「ええっ!」
「おや」
「短い間ですが、皆様と一緒にいられて嬉しかったです」
緋鞠の声に三者三様の反応をする。
「アリア、諦めちゃだめだよ。一体どういうことなの?」
部活が始まって1週間も経っていない。
なのに廃部の危機とは一体どういうことなのか。千歳は緋鞠に問いかける。
「よくぞ聞いてくれた。千歳のせいだ」
「僕のせい?」
「ああ。自分の胸に聞いてみるといい」
緋鞠は腕を組み、厳かに千歳に言う。
「ええと………」
考えてみるが、いっこうに思いつかない。
「千歳様、アリアの知らない間に何かやばいことをしましたか?」
「いや、そんな記憶ないけど」
「本当ですか? ちょっと若さを持て余して、婦女暴行とか女性を無理やり手篭めにしたり、暴力で女性を言いなりにさしたりしませんでしたか?」
「それ全部一緒の意味だからね! そんなことしてないよ!」
「犯罪者は皆そう言うのです。しかし、大丈夫です。犯罪者となっても、このアリア千歳様の味方でございます」
「アリアのせいで犯罪者にされそうなのですけど」
「それはそれでございます」
「そうなの!?」
「ええ」
ウンウンとアリアは無表情で頷いた。
千歳は半分以上納得出来ないが、どうすることも出来ず無理やり納得するしか無かった。
「ということで、私達の答えとしましては千歳様が婦女暴行をした結果、部活の存続が危機になったでいかがでしょう?」
「残念ながら、不正解だ」
「残念なの!?」
「違いましたか、残念です」
「残念って言ってる!!」
御影は千歳とアリアのやりとりを微笑ましく思いながら、緋鞠に自分の考えを述べる。
「正解は部員が足りないのではないかね?」
「みー、正解」
「あぁ……」
「やっと思い出したか」
そういえば緋鞠が部員が足りないと言っていた覚えがある。
ポンと手を打ち、納得の表情を千歳は浮かべる。
それを見て緋鞠は、
「てめ、なんで正解を聞いてのほほんとしてやがる。部員の確保は千歳の仕事だろうが」
「痛い、痛いよ、緋鞠」
背伸びをして千歳の頬を引っ張る。餅のように千歳の頬が広がる。
「今月中、つまりあと一週間ちょっとで部員を確保しないと廃部だね。私達の高校は部活を作るのは簡単なのだが、存続はシビアで困るよ。もっと生徒会長が融通をきかしてもいいはずだ。彼女はこれだから困る」
ぶつぶつと御影が不満を述べる。内容が規則から生徒会長のことになっているが。
「部員ってあと何人必要なんですか?」
「一人だね」
「一人ならまだ簡単ですね」
「その一人を捕まえられないだろうが」
「うぐっ」
痛いところをつかれ、千歳はうめく。
「幽霊部員でいいなら何人かOK貰ってはいるよ」
「幽霊部員か……」
千歳も何もやっていないということではない。部活に名前だけの所属ならという返事は貰えてはいる。
廃部の危機は免れたはずだが、緋鞠の返事は芳しくない。
「最悪、それでもいいが。できたら、ちゃんとした部員が欲しいな」
「やっぱりそうだよね」
返答がわかっていたのか、千歳は緋鞠に同意する。
「どんな人がいいかなぁ」
「面白いやつがいいな」
それは難しそうだ。千歳は緋鞠の納得する人物を見つけられるか一抹の不安を宿した。
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