第134話 閑話 ブーと牧場

――マッスルブ

 道路工事がない時、ブーは牧場で牛の飼育をしてるブヒ。

 ピウスさんがラヴェンナから人間達の飼育している牛を連れて来てくれたのでブー達オークと犬耳族が見ることになったんだブー。


 牛が来たんだけど、牧場の準備が出来てなかったブー。鶏の飼育小屋の隣に木で柵を作って牛をそこで放し飼いしたんだけど、厩舎がないからみんなで頑張って二日で作ったんだブヒ。

 でも、急いで作ったから雨が降ると雨漏りしちゃったブー。


 牛は全部で十頭いて、雄が一頭。残りは雌なんだブー。雄は種付け以外に何もしてないブー。男の子としては理想的な生き方かもしれないけど、今後雄牛が産まれてきたらどうするんだろ。

 ピウスさんに聞いてみるブー。


 牛の厩舎はログハウスみたいに丸太を組み合わせて、隙間に漆喰を塗って雨漏れを塞いでるブー。

 ブーは朝起きるとまず牛の厩舎を見にきて、一頭一頭を手で撫でて様子を見るんだブー。みんなが来たら牛を洗ってあげてから牧場へ放牧するんだブヒ。


 最後の一頭を撫でた後、ピウスさんが牛の厩舎を訪ねて来たブー。


「おはよう。マッスルブ。早いね」


 ピウスさんのお陰でオークは他の亜人から下に見られることが無くなったんだブー。普段から人当たりがいいピウスさんはみんなの人気者ブー。いざという時にも頼りになるから凄い人なんだブヒ。


「おはようブー。ピウスさん牛乳ブヒ?」


「もし余ってたら欲しいなあ」


 ピウスさんは牛乳がとても好きみたいで二日に一回はこうして牛乳があるか聞いて来るブー。

 毎朝届けようか?と言ったこともあるんだけど、「それはさすがに悪いよ」と遠慮したブー。みんなピウスさんになら喜んで持って行くんだけど……


「今から牛乳取ろうブー。ピウスさんも一緒に」


「おお、搾りたて。ありがとう! マッスルブ。嬉しいよ」


「みんなのお陰で牛乳がいっぱいとれるようになったブー」


「そうだよな。みんなにもお礼を言っとかないと」


「ピウスさん、一昨日にお礼を言って回ってなかったブヒ?」


「そ、そうだったかな……牛乳が好きなんだよ。毎朝飲めて嬉しいんだ」


 牛乳が好きというピウスさんはとても嬉しそうブー。ピウスさんが喜んでくれるならブー達もやり甲斐が出て来るブー。


 ブーとピウスさんは、端から二頭目の雌牛の横に立つと、ピウスさんが木製のバケツを構えてブーが牛の乳搾りをするブー。左右の手で順序よくリズミカルにやるのが大切ブヒ。


 牛は暴れることもなく、のんびりと鳴く。


「ふんもお」


 今日も元気そうで良かったブー。


「ブモオ」


 ブーも牛の真似して、牛のように鳴いてみると、ピウスさんが声を出して笑ってるブー!

 そこ笑うとこじゃないブヒ!


「ピウスさん!」


 ブーがピウスさんを睨むとピウスさんは無理やり笑うのを我慢しているみたいで口元がフルフル震えているブー!

 目元には少し涙まで……酷いブヒ。


「ご、ごめん。あまりにお約束の鳴き真似で。つい」


「そんなに似てたブー?」


「そうじゃな……い、いや。そうだよ。すごく似てたからおかしくて」


 なんだか少し違う気がするけど、ブーはあまり考えるのが得意じゃないブヒ。だから、納得しておくことにしたブー。


 褒められたようだからもう一回、牛が鳴くのに合わせてみるブー。


「ふんもお」


 牛が鳴く。


「ブモオ」


 ブーが真似をするブヒ。

 二度ほど繰り返すと、ピウスさんがまた笑い転げているブー。そんなに似てるのかなブヒ。


「マッスルブ。わ、分かったから……そろそろ止めよう。腹が」


「そんなに似てるブヒ?」


「え? あ、ああ。そっくりだよ!」


 搾りたての牛乳を素焼きのツボに移してピウスさんに渡すと、ピウスさんはお礼を言って帰っていったブー。


 そんな朝の出来事が終わる頃、一人また一人とオークや犬耳族がやって来て、牛を放牧に出す時間になったブー。


 牛達はノンビリと厩舎から出ると、ふんもおと呑気に鳴きながら草を食む。

 牛は草ならわりになんでも食べるんだけど、人間達から勧められた牧草という草を牧場に植えてるブー。


 牧草は特に何もしなくてもドンドン繁茂するから手間いらずだけど、どう見ても牧草って雑草ブー。

 雑草でいいならキャッサバの葉っぱでもいいかなと思ったんだけど、試しにキャッサバの葉っぱを牧場に置いてみたところ、牛は全く興味を示さなかったブー。


 キャッサバは美味しいのに、牛は雑草の方がいいみたいブヒ。好きな食べ物って難しいブー。


 お隣の鶏はキャッサバ粉を食べてるみたいで、草食竜は草ならなんでも食べるってリザードマンが言ってたブヒ。


 まあ、ブー達にも好みはあるしピウスさんにもベリサリウス様にも好みはあるから、気に入った食べ物を食べればいいと思うブー。

 食べるものを選べる環境にしてくれたのはベリサリウス様とピウスさん。ブー達はローマに来るまでは食べ物を確保するだけでも大変だったのに、今では好きな食べ物を選べるまでになっているブヒ。


 明日生きることもサバイバルだったブー達。ブー達以外の亜人でもリザードマンとか安定した暮らしをしていた種族もいたけど、ローマ程幸せで安全な環境だったわけじゃないブー。

 ベリサリウス様がローマを作ると言った時はビックリしたけど、こんな楽園ができるなんて思ってもみなかったブー。


 今日ピウスさんが牛の鳴き真似を気に入っていたようだから、ブー達みんなで練習してベリサリウス様とピウスさんに聞かせよう。


 きっと喜んでくれるブー。

 ブーは牧場で牛とノンビリ過ごしているオーク達を呼んで、牛の鳴き真似をする提案をしたブー。


 オーク達は面白そうだとブーに協力してくれたブヒ。


 待っててくださいブー。ベリサリウス様、ピウスさん。

 素敵な牛の鳴き真似を披露するブヒ。


 ブーは披露する日を想像しながら、牛の鳴き真似の練習に励んでいるブー。

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