マカロニサラダウエスタン2

竜宮城 司

第1話 青の鯨 序

  ここは火星では上流階級が住む宅地。周りはバイオプラントで美しい木々が茂り、清らかな川が流れていた。そんな場所の真夜中に数台のヘリが飛び交いその中にラヴ・レターのメリーも居た。「こちら力の宗教、ベータ部隊。八の一地区のソーダ博士宅に保管されているゲイボルグが暴走した模様」

 メリーがそれを聞きレシバーを取り、

「こちらラヴ・レター、総裁メリー・プーチン。そちらの状況を知りたい」

「こちらベータ部隊。ソーダ博士宅はゲイボルグの残骸で有ろう赤い柱によって封鎖されてる。位置的にそろそろ確認出来ると思われる」

 メリーが双眼鏡で覗くとそこには赤い柱が数百本が家に刺さっている状態であった。

 ヘリが到着するとメリーは部隊長へ話しかける。

「状況は?」

 部隊長は下を俯き、

「状況はあの柱に遮られて不明。レーザー、破砕機、爆破などを試しておりますが一向に進まず」

 それを聞いたメリーは部隊長にビンタをして、

「中にはソーダ博士や子供が居るんですよ。慎重にして下さい」

 メリーは家に駆け寄ると、

「ソーダさん、ソーダさん。私、メリー。返事をして」

 すると赤い柱が発光して徐々に柱は収縮していった。玄関のドアは破れて中央階段まで見える。中にはソーダ、家政婦、強盗の死体と手を繋いだミルクとカフェオレの姿があった。




 ここは火星の酒場。人々はそれぞれギャンブルや酒を飲みながら楽しんでいる。そんな中でウエスタンな世界観とは不釣り合いな和服を来た二人がカウンターで話している。

 黒人の黒い和服を来た男が話す。

「なぁ、タナカよ。相変わらず火星の臭いはキツいな」

 それに黄色い和服を着た黄色人の男が返す。

「仕方ないよ。ケビン、ここには家畜しかいないのだから。そう地球人の家畜しか」

「おう、今のは聞き捨てならんな。地球人か。観光客か。客だったら客らしくリゾート地区のホテルにでも行きやがれ」

 和服の二人が後ろを向くと銃を突きつけた男が立っていた。するとケビンの方が、

「ハハハ、来たかタナカ。観光だってよ」

 タナカも軽く笑い。

「そうだな。なぁ、お兄さん。俺たちは観光に来たんじゃない。もっと楽しい事としに来たんだ」

 すると銃の男は構わず引き金の引きケビンを撃った。そして自慢げに、

「なんだ? その楽しい事って? 葬式か?」

 タナカはまた少し笑みを浮かべ、

「テロさ」

 その言葉の後に酒場の数カ所から爆破し当然、銃の男も死んだ。死体と瓦礫の中でケビンは立ち上がりタナカは、

「大丈夫か、ケビン。やはり火星は野蛮だな。お前がサイボーグじゃなければ死んでたぞ」

 するとケビンは、

「ハハハ、まったくだ。俺たちにはまだ崇高な指名が待ってるんだからな」

 タナカも椅子から席を立ち返す。

「そうだな戦争をするって目的がな」




 荒野のど真ん中。ヘトヘトそうに猫背で歩く三人の少女が居た。

 お団子頭の赤いジャージーを来た胸が放漫な長身の娘が愚痴る。

「姉さん、最近は本当についてないっすよ。列車は事故で止まるし、馬車も車輪が外れるし、とどめに馬も逃げ出すし」

 姉さんと言われた背が小さく平たい胸でビキニの上にホットパンツにウエスタンブーツを履いた金髪ツインテールの少女が、

「黙れ、蝶子。今は人気のあるところに行くのが先だ。たく、せっかくの大物がこれじゃあ逃げちまうぜ」

 最後に黒いセーラー服にピンク髪のタレ目の娘が、

「すみません、すみません。ミルクさん。私のせいでこんな事になってしまって」

 ミルクと言われた金髪ツインテールの娘は振り向きもせずに、

「気にするなニート。だいたい不幸ってのは自分の中にある思いこみだ。常に不幸なのは自分自身で他人から見たら不幸はそれほど不幸じゃない」 すると赤いジャージーの娘が、

「おー、名言言ってるっすね。じゃあ、逃げた馬を撃ち殺した事も自分の中の思いこみなんすね」

 ミルクは舌打ちをし、

「黙れ蝶子。他人の不幸も自分の不幸。世界は皆、友達だよ」

 蝶子と呼ばれた赤ジャージーの娘は、

「何か良い感じの言葉っすが煙り巻く気っすね」

 蝶子の反論に再び舌打ちをするミルク。そしてさっきニートと呼ばれたセーラー服の娘が指さす。

「あ、あそこに家が有りますよ」

「でかしたニート」

 ミルク達はそこに駆け込んだ。

 暫くして家に到着したミルク達は気前が良さそうな女性に向かえられた。

「いやー、助かった。おばさん助かったよ。こんな荒野の真ん中で干からびるんじゃないかって思ったよ」

 ミルクは水を飲みながらその女性に感謝をした。

「良いって事よ。助け合いは火星人の挨拶よ。最近は皆、自分の事ばかりだけど元々は困った人を助け合うのが火星人スピリッツって奴よ」

「お姉さんは開拓民さんの子孫すか。久しぶりに来たっす。火星人スピリッツ」

 蝶子は冷たくなった水を首に当てながら話す。

「そうさ、私は三世代だけどね。当時は婆さんやお袋に色々聞かされたものさ。

元々は火星移民計画で地球が政策したものだけど実際は火星の植民地政策だったてのが最初の話。

その後は火星の独立運動が起きて戦争になりかけたり法人や企業がそれぞれ火星を支援し出してさらに内戦。そこに十三柱の設立に関して火星が安定化して今に至る。

まぁね、今の火星も荒れてるが昔に比べたら安心して買い物が出来るってお袋が言ってたよ。

ただね、唯一の心残りはソーダ博士がこの世にいない事だね」

 するとその言葉と同時にミルクが寂しそうな顔をする。するとニートが空気を変えようとしたのだろう。

「あ、あの、すいません。ソーダ博士って誰ですか?」

 するときっぷの良い女性がキョトンとした顔で、

「おや、ソーダ博士を知らない。ソーダ博士と言えば火星内戦を集結させた火星の英雄だよ。

本当に残念な事さ、地球じゃ英雄扱いされてる慈善集団『青のあおのくじらって組織に襲撃されたんだ。細かい事は十三柱のシークレットらしいが本当にもったいない事だよ」

 そこにラジオで速報が入る。

「速報です。現在、ウィントン五地区でテロが発生。鈴木すずき麒麟児きりんじ氏を拉致し犯人は逃走中。犯人は青の鯨のテロリストの模様」

                  終

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