第三章:UMA探偵と蠢く者ども-3
指示通りにそこでおとなしく待っていると、上空にヘリが現れた。
「あれに乗れっていうことかな?」
有馬の言葉に対し、パーカーの男が頷く。
ヘリに引き上げられた後すぐに、有馬は手錠をかけられ、更に目隠しまでされるはめになった。どうやら、行き先を知られたくないらしい。
さて、こいつらはいったい何なのか。ここ最近のUMA案件について、有馬と敵対している組織というと、思い当たるものは一つしかない。東雲達の一派だ。
しかしどうにも、やり方というか、行動パターンが彼らとは違うような気がする。あの一派だったら、はたしてネットランチャーの様な非殺傷武器を第一選択肢とするだろうか。
もちろん、同じ組織にいても人によってやり方は違うだろう。たとえば、バッタの時に会った“隊長”と東雲では、後者の方がだいぶ手ぬるいところがある。だからこいつらが東雲の仲間だったとしても、さほど不自然なことではないと言うこともできはするのだ。
しかし有馬の勘は、このパーカーの男は東雲達とは別勢力ではないかと告げていた。
相手が何であれ、今は何とかして少しでも情報を引き出すことが肝要か。そのためには、会話が必要だ。
一見不自然でない会話から、さり気なく相手の情報を引き出す。そしてその情報を、この状況を打破するために活用するのだ。相手がこちらをどうするつもりなのか分からない以上、いつまでもおとなしく言いなりになっているわけにはいかない。
「さて、こちらはちゃんとおとなしく君達の指示に従っているわけだが、あっちの三人はちゃんと無事なんだろうね?」
こちらからかける言葉として、今一番不自然でないものはこれだろう。
そういう計算もあるが、相手が人質に手を出していないか気になるというのも嘘ではない。本命である有馬を捕らえたら後は用済みとばかりに殺されていたのでは、目も当てられない。
「その点については、心配する必要は無い。我々は滅多なことでは人を殺したりはしない。……あいつらとは違ってね」
「我々? あいつら? 君達は何で、あいつらっていうのは誰のことだい?」
おっと、失敗した。今の質問は、いくら何でも直接的に踏み込みすぎた。これで警戒して何も答えてくれなくなるか?
だが、パーカーの男が返してきた答えは有馬にとって予想外のものだった。
「そのあたりも含めて、後できちんと説明がある。手荒な真似はしたが、それは我々としても色々と警戒が必要だからであり、これはお前自身の安全のための処置でもある。詳しい話は上の人間からさせてもらうが、UMA探偵、お前は危険な案件に首を突っ込みすぎている」
「危険?」
有馬は肩を竦めてみせようとした……が、手錠をかけられているせいでいまいちしまらない。
「今更そんなこと言われなくても、UMA探偵に危険はつきものだよ」
「お前の言う危険とは、ウミウシに毒針で刺されるかもしれないとか、せいぜいその程度のものだろう」
「君達はやはりあのマンドラゴラのことを最初から知っていたわけか。叫び声で人を殺すマンドラゴラが出たという情報が入ってきたからここに来た時から、何かおかしいとは思ってたんだ。『人を殺す』ことが知られるためには、誰かが殺されなきゃならない。しかし実際に人が死んだらさすがにもっと騒ぎになるだろうからね。さしずめ、あのマンドラゴラをあそこに放ったのも情報を流したのも君達で、最初からあれはこのUMA探偵・有馬勇馬を釣り上げるために用意された餌だったってわけだ」
「察しが良いな。だいたい当たりだが、あのマンドラゴラはそうでなくともあそこにいたものだ。それをいったん我々が捕獲し、毒腺の除去と発信機の埋め込みを行ってから再度放した。ちなみに、マンドラゴラが人を殺すという情報は嘘ではない。実際に、捕獲時に我々の仲間が一人やられてしまった。表向きはただの事故死として処理されているがな」
「素人が迂闊にUMAに手を出すからそうなる。次からはちゃんとプロフェッショナルであるUMA探偵に依頼することだね」
有馬の発言は挑発とも受け取れるものだったが、パーカーの男は、少なくとも声で分かる範囲では感情の変化を示さなかった。
「動物だけを相手にしていれば良い案件なら、喜んでそうさせてもらおう」
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