また君は笑っていた

狂音 みゆう

白の彼

 整った純白の世界を濁す。僕は、いつも彼の部屋に来る度に、そんな感覚を感じてしまう。ただ、この戸を叩くのは止められない。この部屋の主が魅力的だから、とか浮ついた理由も僕の中にはあるかも知れない。でも、僕はきっとまた君は僕に笑顔を向けてくれるから。君が僕にへの愛情を僕に向けてくれるから、戸を叩く。

「響だけど。入っても、良い?」

 扉の向こう側にいる君に声を掛けた。

 暫くすると、僕のいる外側のノブも周り、君が顔を出した。

「あぁ、響。どうぞ。」

 _神舞こうま 白離はくり。白絹の様な白髪と、白い肌。張った水の上に瑠璃紺るりこんの絵具を落とした様な、透明感のある瞳。唯一と言って良いその瞳の色の色素がこんなにも薄いと、黒髪の僕の髪1本で、白離の全ての色を塗りつぶせてしまいそうだ。

 白離の後ろに広がる部屋も、一輪の花以外の色彩などほとんど無くて、無彩色そのものだ。…僕が愛してやまない彼とは、真逆の意味での無彩色だ。

 引き込まれる様に部屋に入ると、白離の座っていたであろう場所の隣に腰掛けた。

「珈琲で良いかな?」

 優しい声で問い掛けて来た。良いよ、と軽く返事を返すと、吸い込まれて仕舞いそうに黒い珈琲を淹れてくれた。

 机の上には飲みかけの紅茶が置いてある。白離の飲んでいた物だろう。

 白離が僕の隣に腰掛けると、柔らかな笑みを浮かべて話を始めた。

「今日は、何を話そうか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

また君は笑っていた 狂音 みゆう @vio_kyoyui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ