『絶望』が『希望ヒーロー』の腕を引きちぎる。



―—やめろ……やめてくれ!



俺は喉がつぶれるほど声を出し、体が引きちぎれるほどに手を伸ばす。


どれだけ声をからしても、どれだけ手を伸ばしても『奇跡』は何も起こらない。


俺の前で『希望ヒーロー』が、『絶望』に貫かれた。



―—お願いだから……やめてくれ……!



「うわぁあああああ! いやだ! いや」


 笑顔の『希望ヒーロー』が、『絶望』に首を飛ばされた。


「ああ……ああぁあぁああああぁあぁぁぁあああよくも! よく」


チームを組んでいる『希望ヒーロー』が、『絶望』に一人づつ殺された。


「…………」


 老獪の『希望ヒーロー』が、『絶望』に圧殺された。


 貫き潰し飛ばしてちぎって殺して殺して殺して殺す。


 『希望ヒーロー』は真っ赤になった後、すべては黒く染まっていく。


 『絶望』は笑う。


 楽しそうに、楽しそうに……。



―—……ああ……あああ……。



 俺の声は届かない。


 俺の手は届かない。


 俺がやったことに意味はない。


 俺は何もできなかった。


 何もできない俺が崩れ落ちる。




――もういやだ……もういやだ……。



 それでも『希望ヒーロー』は消えていく。


 何も知らずに囲まれて、何も知らずに殺されて、そのまま食われて消えていく。


 何度も何度も何度も何度も。


 惨劇が目に見えて、呪いの叫びが耳に聞こえる。


 耳をふさいでも聞こえてくる。


 目を閉じても見えてくる。



――やめてくれ……やめてくれ……やめてくれ……。



「……生きてくれ」


 最期にそういった『希望ヒーロー』は『絶望』に殺された。


「ちょっくら行ってくる」


 そういった『希望ヒーロー』は帰ってこなかった。


「いってきます」


 そういって弟は逝ってしまった。




――……うるさい。





――うるさい。





――うるさい!





――うるさい! うるさい! うるさい!




!」


!!」



――ぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!









 寝苦しさから目を覚ました。


 あれから三時間。


 どうやらいつのまにか寝ていたらしい。


 体の不快感に気付く。


 どうやらすごい汗をかいているようだ。


 風呂にでも入ろうか。


 そんなことを思いながら夢の内容を振り返る。


 いつも見る夢だ。


 ただそこに正司が加わっただけのことだ。


 だから俺はいつも通り、頭を掻き、つぶやくのだ。


「……そんなことわかってるんだよ」


 と。

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