第21話 機関車

 世間はますますにぎやかで、活気にあふれていたが真の心は晴れなかった。

 蒸気機関車というものが近くまで来る、といって人々は浮かれていた。

  その話をすると春は少し、嬉しそうに目を輝かせた

 真は自分の知っている限りの知識を話してやった

  「煙を吐いてすごく速く走るそうだ

  来年が来たら一緒に乗ろう」

というと


「いいよ、見るだけでいい、なにかこわいもの」

春は儚く笑った。


 もう少しで温かくなるのに春の体は、少しづつ衰えた。

真はもう病院へ連れて行くのはあきらめていた。

 あの、解剖の光景を見たからだ。

春の体があんな扱いを受けるのはいやだった

代わりに一つの決意を固めて胸に秘めた

 冬の終わりの冷たい光は、春の訪れともに白い雲をふわりと漂わせた

山のあらたな命もあちこちで息づいて小さなトカゲや草が顔を出し

 あまずいにおいの小さな花が咲いた。


 





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