第20話 冷たい月

 冬が深くなりぐんと気温が下がると、そんなことは言っていられなくなった。

 春はいつも物憂げにして、生命力を急速に失っていくように見えた。

その冬は特に冷え込んで雪が降り、色彩への感覚さえ失われせた。


 たきぎは集めてあったが十分ではなかった。

 ありったけの布団と布と自分の体温で温めたが、真を力なく見上げて

  そっと目を閉じたままじっとしていた。


 真は、小さな窓からみえる冴え冴えとした月が憎かった。

 病院へ行こうと真がいうと春は首をふった

 

 もし病院へいったら、家に戻されてしまう

  それでも病気はなおるだろう、それからなら何とかなる

説得しても、いつもらしくなく首を振った。

 真は、明日こそと毎日思いながら、眠った。

 冷たい月が憎かった。

本当は、春を手放したくないのは、自分なのだ

 月がそう言って、じぶんを責めているような気がした。



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