第18話 幸せな時間

 真は再び療養所の中に忍び込んだ

天井裏からのぞくと5、6人が真剣な顔で何かを囲んでいた


 それは死体の解剖であったが、もちろんその意味は分からない

ひどい匂いがした、その中で何か真剣に話し合っている。

 また死体を縫い合わせて人がいなくなってしまうと真は真っ暗な

部屋に降りた。


 目が慣れてくると部屋には、数かずの薬品が置かれ、その中に真が

最初に見た、瓶があった。

 春に使ったものである。

 なぜか衝動的にそれを取った。

屋根を超えたときにあの真剣な表情を思い出した。

 みんな胸を打たれるくらい真剣だった。

春はそんなにひどい扱いは受けなかっただろう、事実足の治療もしてもらっている

そう思うとほっとした。

 

麗らかで暖かな季節は春の体調も良く、真は春を背負って山を歩き

 町にも出た。


何でも喜ぶ春は笑ってばかりいて心から真を信じ頼っていたし真もそれを嬉しく

思った。

 お金が足りなくなると盗みに入ったが、それは言わなかった。


 思い切って人力車にも乗った。


 春はいろいろな事に喜び幸福だった。

 真にも甘えているような声で、ありがとうと何度も言った。

 そんなに何度もお礼を言わなくていいというと、そういうと嬉しい気持ちに

なれると言って笑った。

 それを聞いて真も笑って喜びを爆発させた。

タンポポは増えて黄色、あたりいちめんに・・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る