第16話 実験
あそこは病院で、自分の足を直してくれたと春は言う
切断された足は、治ったとは言わないかもしれないけど、でも痛みからは逃れられた。
あの時、死んでしまったらどんなに楽だったろうかと春は言う。
でも気が付いてしまった、そして今まで感じたことがないほどの激痛が来た
何度か、気を失いながら、自分が何をめざしていたかもわからず里に下りた。
足が休みなく痛みを送ってくる、見るとはれあがって変色していた
次に気を失った時、座敷にいた、男が何か言っていたがわからなかった。
何度か水を飲み、眠って眠ってそれからだんだん意識がはっきりしてきた
が何も考えられなかった
真は自分が助けたことが、春にひどい苦しみを与えてしまったことを始めて知った。
それは時間をかけて春を愛への思いが深くなるたびに自分を責めさいなむことに
なる、その時は実感がなかったが、徐々に罪悪感になり深くなる
それから帰るたびにたんぽぽを持って帰った
それだけで大喜びする、春が愛しく、痛々しかった
たんぽぽが綿毛になると地上の光が入るように開けられた明り取りの窓から
それを吹いた
そして「来年にはもっと増えるかな」と笑った
真も笑って「もっと欲しいか」と言った
春は、たんぽぽを集める真を見ている
夕方になり赤い反射光が真の背中に当たる。
真は太陽を見ていない、気に留めてもいない、その背中一面に太陽が当たる
春は、それを眺めるのが好きだ
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