魔法少女ゆめみる☆ユメカ-Dream that changes your world-

宮海

イントロダクション


 【我々は夢と同じ物で作られており、我々の儚い命は眠りと共に終わる】


 ――それって、誰の言葉だっけ。

 呟いたはずの俺の言葉は、音のないノイズに掻き消された。

 視界に映る暗い部屋。

 LEDの灯る巨大な機械と、それに無数のコードで繋がったノートパソコン。

 無機質で冷たいその光景は、乗ったこともない宇宙船の室内を髣髴とさせる。

 文章は、パソコンのディスプレイに浮かんでいた。

 その、やけに芝居じみた三十四文字の言葉の意味を、俺は知っていることを自覚する。

 ……つまりさ。すべては一時の夢だってことだろう?

 どんなに楽しくたって、悲しくたって。

 何かを頑張ったって、諦めたって。

 そんなの泡沫。淡い夢。

 目を開けている間だけの幻想で、目を閉じればすべては消える。

 世界は容易に終わる。

 だから、俺たちは変わらないんだ。

 変わっても変わらなくても結末は同じなら、変わらない方が省エネルギー。何もない平穏なる日々こそ至上の幸福、世は並べて事もなし。

 それが――たとえ、間違った選択だとしても、それが【世界】の望む姿なら。

 世界ってなんだろう、なんて、考えることなく日々を過ごすこともできたはずだったのだ。

 ……って。何を語ってんだ俺。徹ゲーのしすぎで頭ブッ飛んでんのか?

 視界にモヤがかかったような感覚。なのに意識ははっきりとしていて、なんだか身体がフワフワする。自分が今、床に立っているのか浮いているのかすら判然としない。

 なのに、頭の奥ではガンガンと警鐘を鳴らすもう一人の俺がいて。

 暗闇の部屋の中に見知った奴の姿が現れた時、俺は漠然と「これは夢だ」と理解できた。

 ――夢見乃ゆめみの夢叶ゆめか

 俺が保育園の頃からのクラスメイト。

 俺の夢の中に勝手に出てきたあいつは、口を真一文字に結んだままパソコンの前へ進み出て、


 【あなた次第で、私の身は自由になる】


 あいつの指がタイピングしたその瞬間、世界は、ぐにゃりと変革した。

 白む視界のただ中で、俺は今更になって例の文章の出自を思い出す。


 あれは、そう。

 昔図書室であいつと読んだ、何百年も前のおとぎ話――。

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