旅をしよう。君と、夏の終わりの果てまで
長月紅葉
episode1─旅と夏の始まり
夏の始まり
彼女は夏が嫌いだった。
彼も夏が嫌いだった。
太陽の光のように降り注ぐ、蝉の声が鬱陶しいからではない。
突然、雨が激しく地面に打ち付けられるからでもない。
時折、吹く風が生ぬるくて気持ち悪いからでもない。
彼女にとって、そんな事はどうでも良かったのだ。そんな自然現象に興味がなかった。
彼にとっては、そんな事どうでも良かったのだ。自分のことで精一杯で、それどころじゃなかった。
例え、蝉の声が永遠に聴こえても。
例え、雨が永遠に振り続けたとしても。
例え、生ぬるい風が永遠に吹き続けても。
例え、色が永遠に無くなったとしても。
彼女が、夏を嫌いな理由。
彼が、夏が嫌いな理由。
彼が、夏を好きになれない理由。
彼女が、夏が好きになれない理由。
それは──
この傷が隠せなくなるからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます