第43話モンスターと春の風

 春の風は強いなあ。

 春一番が吹いてから……

「今日は春二番かな?」

 散歩に行ってからと言うもの、ボロボロになって帰ってきたホイミスライムたち。

「もう! 春二番とか悠長なこと言ってられない!! 暴風だよ!!!」

「花粉は大丈夫だった?」

「大丈夫!」

 ホイミスライム、目が赤いけど。わたくし外に出なくてよかった。

「ていうか、買い物行ってきたから荷物運んで!」

 当然のようにさまようよろいが呼ばわる。

 彼女はあまりの風の強さに、店外へ出られなかったそうである。

「えー、まっさかあ!」

 笑ってしまう。重金属のさまようよろいが、風を恐れて、店の出入り口の前で「みをまもる」してしゃがんでいたというのだから。

「うそでしょ?」

「もう、風に飛ばされるかと思ったごたい」

 わたくしはもう一度げらげらと笑った。

 レベル92の魔物が恐れるのが春の風とは……恐れ入ったよ。まったく。


 ああ、お湯が沸いた。今日はビターチョコを飲もうかなあ。

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