第41話ホイミスライムのしあわせのおまじない

 今日は節分である。

 なにやら関西方面から伝わってきたという、恵方巻。

 これをホイミスライムが作りたいと言ってきかない。


 いや、別にいいけれど、と任せてみた。すると……

 多少は詳しいらしいさまようよろいが、横から

「飯に味がついてなかったい」

 とブツブツ。

 ホイミスライム、構わず巻く。

 焼きのりの上に米飯と具材を置いていき、

「巻きすなんていらないんだって。こうして手で巻いたほうがはやいって!」

と、繰り返すのだが……


「ホイミスライム、おまえそもそも手はないだろう」

と言うと、彼女はえ~? と不平をもらしつつ

「いいじゃない。こういうのは気持ちが大切なんだから」

 どこかで聞いた風なことを言う。

「今年の恵方は?」

「北北西!」

「ホクホクセイってどっち?」

「十二時の方向を北と思ったら、十一時の方向」

 そうかそうかと皆で北北西をむいて食べる。

さまようよろい「味がなかったい」

 とリンゴ酢に砂糖を加えて皿にあけたものを差し出す。

 ホイミスライムは酢飯と言うものが理解できていなかった。

「塩でいいでしょ? 具にだって味はついてるんだし」

さまようよろい「味がなかったい……」


 そして節分は。

「いいよ、あんなの迷信でしょう?」

 というと、ホイミスライムが丸い目をわくわくさせながら、

「ええ~、こういうのは……」

 とやるから、はいはい気持ちが大事、ね。と言うと、彼女はぷるるん、と顔を震わせ

「こういうのは、幸せになるためのおまじないだから」

 少女趣味か。


 もういいとばかりに、部屋で勝手にくつろいでいたまどうしに鬼の面をつけさせ、追い回す。

「鬼は~外、鬼は~外。福は~内、福は~内」

 息が切れるほど本気で逃げるまどうしに追い回すわたくしたち。

 あとはみんなで昆布茶を飲んだ。うめぼしと豆を加えて、締め!

「よかあんばいたい」

 さまようよろいがほっこり笑った。

 

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