03.生きることは善いことか

 お風呂に入っている時、はたまたご飯を食べている時、あるいは布団の中で、時たま考えることがあります。


 ――どうして私は生きているのだろうか?

 ――生きることに意味はあるのだろうか?


 生きることは善いことか、と問われれば、つい肯定してしまいます。

 どうやら私にはそういう刷り込みか、生得的な価値観があるようです。しかしこれは正しいのでしょうか?


 生きることは善いことでしょうか? そこに絶対的な価値はあるのでしょうか?


 遙か昔、とある哲学者はこう言ったそうです。ただ生きるのではなく、善く生きるべし、と。


 この言葉が正しいのであれば、どうもただ生きることはそれほど善くないことのようです。

 確かに、そうでなければ尊厳死という言葉は生まれなかったかもしれませんし、自ら死を選ぶ人ももっと少なかったかもしれません。


 思うに、今の私達にとって生きることは手段でしかないのではないでしょうか。

 ずっと昔、ソクラテスが生まれるよりももっと前、いつ肉食獣に襲われるか、あるいは飢えて死ぬか分からなかったような時代。その頃は生きることそのものが目的だったのでしょう。

 けれど今や私達は、生きることで何をなすか、そちらに重点を置いているように思えます。


 もしも、生きることを手段として、達成しようとしていた目的が達成できなくなったとしたら、あるいは目的そのものを見つけられなかったとしたら――。


 生きることに価値はあるでしょうか? それとも……。

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