第2話 大切なペンダント
彼の名前は篝火白、篝火グループの養子の一人
篝火グループは身寄りのない子どもを保護し、場所を与えている。
白は真面目で努力家である。
桜とは同い年で、現在は16歳である。
「おーい...おーい白ちゃーん」
透き通るような綺麗な声が俺の名前を呼ぶ、声がする方向に目を向けると、道場の扉の横で、すらりとした髪が長くスタイルの良い女が立っていた。
「白ちゃん、また鍛練?よく飽きないね〜」
そう、俺は今、剣術の鍛練をしている途中なのだ。
「そうだよ、天才のお前に勝つには遊んでる暇はないんでな...何の用だ?」
女はクスクスとイタズラに笑う。
「用?白ちゃんに会いに来るのに用っているのかな?」
「いつもの茶化しか?用がないなら俺は鍛練に戻るぞ」
「はーい、白ちゃん頑張れ〜私はいつものように見てるね〜」
女はただ、鍛練をしている俺を茶化しに来ているだけ、特に用はない、いつもの事だ。
「あ、ちょっとー白ちゃん、またペンダントの紐切れかけてるよ〜?また新しいのにしないとね〜」
激しく動く剣術の鍛練のせいだろうか、首にかけているペンダントの紐がほんの少し解れている、ペンダントを置こうとすると女はニコニコしながら手を出し近づいてきた。
その手にペンダントを置いた。
「替えておくね、こういう小さい解れも放っておくとすぐ切れちゃうから気づいたら教えてね?」
それは、本当に小さな解れで遠目で見ても気付かないような大きさなのだ。
この女が天才と言われる所以を改めて思い知った。
「あと二回か〜もうすぐで一回になっちゃうね〜白ちゃん?」
「安心しろよ、今度は勝つからな桜」
女は嬉しそうに笑った。
「やっと名前で呼んでくれたね白ちゃん、最近ずっと呼んでくれなかったから嫌われたと思ってたよ〜」
嫌われたと思っているやつが毎日茶化しに来るのだろうか。
「嫌われた、じゃなくて嫌いなんだよ」
「えーひどいなー私は白ちゃん好きなのに」
これは嘘をついている顔だ、顔が少し笑っている、小さい頃からの付き合いだからかさり気ない変化がわかる。
「嘘をつくな...」
俺が言い終わる前で、道場の扉が勢いよく開き、見知らぬ男が現れた。
「桜お嬢様!ここに居たのですね、帰宅の時間が過ぎております、お父上がお怒りです。貴様篝火の...気安く桜様に話しかける事は許されていないはずだが?」
桜の家は規則に厳しい、天下の月影は天才を集めて厳しく教育しているからだ。
桜もそうなのだろう、いつもつまらないと言っている。
「申し訳ありません、桜様に剣術のご指導をして貰っていました、お許しください桜様」
桜は俺の態度を見て急に不機嫌になる、これもいつもの事だ。
桜はペンダントの紐を替え終わっていて隠すように渡された。
「では、桜お嬢様お父上のところに」
「わかりました、父にお伝えください、いくらでも罰は受けると」
「承知いたしました」
男と桜は道場から出ていった。
俺は何も考えず鍛練を再開した。
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