吉村絵美留『修復家だけが知る名画の真実』(青春出版社)

 美術品修復を専門とされている方が体験された、大小様々なエピソードを集めた本です。


 喫茶店に長年飾られ、随分と汚れていた絵画のクリーンナップを依頼されたら、実はその絵はある有名な画家の作品であることが発覚した・・・といった驚きのエピソードから、修復の具体的な方法まで、普段我々が知ることのない「美術品修復」という世界を存分に堪能することができます。


 絵が痛んだ場合、修復家であればその画家が使った顔料の成分分析までして、作品の本質を損なわないように丁寧に修復します。一方、美術作品は「作者が手を入れた姿が正しいものである」という概念を適用した結果、絵のちょっとしたハゲを作者が雑にマジックペンで塗りつぶしたとしても、それは作者が手を入れたものだから正しい修復である(いいんだそれ!?)・・・・・・なんて冗談のようなエピソードもあって非常に楽しい!


 この本を読んでから美術館に行くと、今まで気に留めていなかったはずの「顔料」や「額縁」といった新しい観点についても考えるようになりました。


 美術の本といっても全然堅苦しくなく、ちょっとしたコラムくらいの感覚で優しく読めるので非常にオススメの一冊です(もう売ってないかもしれないけど)。

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