そして誰も幸せになれなかった

@azusapastel

第1話 クリスマスプレゼント

2016年11月29日。わたしの大好きな人、つまり彼氏。そう思っていた人は別の女性と婚姻届を出していた。それがわかったのは、クリスマスイブの前日だった。正直信じられなかった、信じたくもなかった。だけどこれは全て本当にあったお話。


わたしは、とある病院で看護助手をしている。わかりやすく言えば「介護士」になるのだろうか。毎日身勝手な患者を相手に、嫌な顔一つせず働いている。26歳にもなれば、愛想笑いの一つや二つ慣れたものになる。思ってもいない言葉も簡単に口に出来たりする。自分が子どもの頃に描いていた大人とは全く別物だった。小さい頃から、両親には愛情がなく育てられた。そう思って今まで生きてきて、男性に優しくされれば、全て信じて「わたしの味方」とでも考え、自惚れていた。そしていつも簡単に裏切られていた。


だから、恋愛には慎重だった。慎重になっているつもりだったのかもしれない。前の彼とは別れて2年は過ぎていただろうか。別れた原因は「浮気」。そんな彼は「浮気ではない。」と最後まで言い張った。「お金をくれるから家に泊めた。」そう言われた。なぜこんな人を好きになったのだろうと自分で自分が情けなくなった。だけどこれはまだ可愛らしい出来事だった。まさか自分にこのような経験が待っているとは、この頃は全く思っていなかった。「次こそは。」そう言い聞かせて、男性にはとりあえず冷たく接していた。恋愛対象に見られないために。一夜限りの相手にされないために。そう積み重ねて生きてきた。やっと自分を見つめてくれる彼に出会えた。そう思えるくらい、気づいたときには彼が大好きだった。


その彼との出会いから、既婚者と知るまでの4ヶ月間を人生の経験として「クリスマスプレゼント」と名付けることにした。


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