まるで万華鏡のような
マフユフミ
第1話 うすみどり
カランカラン、とふってみる。ラムネの瓶。
薄く透けた緑の中で、つややかな玉が踊る。
カランカラン、もう一度ふってみる。また踊る玉。
もっと近くで見たくて、瞳をぐっと近づける。世界がうすみどりに染まる。
ぼんやりゆがんだ視界の端っこを見て、少し笑った。
瓶越しに見る世界は、こんなにも遠い。触れたくて手を伸ばしても、大切なものには何一つ届かない。私の掌だけ、ぽつんと空中に浮かんでいる。
せめて何かをつかみたくて指を曲げる。すりぬける冷たい風。夢や希望のようにはかなく指の間からこぼれ落ちる。
いつだって手に残るのはむなしい思い。投げやりになったって、人目をはばからず泣いてみたって、その穴は埋まらない。
カランカラン、涼やかな音。飲み干した後に現れる素敵なおまけ。
取り出して手の中に転がしたいのに、外で覆うガラスが邪魔をする。欲しいのに手に入らない、儚い願い。
もしこの玉を取り出せたなら、握って転がして太陽に透かして、心行くまで遊べるのに。
でももしこの玉を取り出してしまったなら、この憧れを持ち続けてはいないだろう。私はそういう人間だから。
カランカラン、またふってみる。うすみどりの世界をのぞいて、取り出したいと願ってみる。この手に、何かをつかめるまで。
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