毛玉戦隊セリアンズ! 草葉の陰からドンジャラホイ
Ryo
すべては愛の名のもとに
第1話 永遠の浜、あるいは
多くの人にとって一番身近な動物は、ペットと呼ばれる存在でしょう。イヌやネコ、ウサギなど、最近は種類も増えてきました。彼らは皆等しく、人間の素敵な友だちです。精神に潤いを与え、励まし、実用的な意味を含めてさまざまに役立ってくれます。
けれども、彼らには共通して、致命的に残念な点があります。それは、寿命が短いこと。ほとんどのペットは、二十年も生きれば大往生です。小さな動物たちの中には、病気などをしなくとも数年しか生きられない、寿命の短い種族もいます。
だから人間は、彼らと友だちになるとき――ペットを飼うとき、無限大の喜びと共に、確実に訪れる悲しみも同時に受け入れなければなりません。どれほど愛しても、病気や怪我をさせないように気を使って健康的な生活を徹底しても、彼らは人間よりも先に死んでしまうでしょう。
彼らの魂が今にも肉体を離れていこうとするとき、人間たちにできることがあります。それは、最後の最後に、約束を交わすこと。前足を握って握手しながら、あるいは気持ちを込めて頭を撫でながら、それさえもできない状況であれば愛くるしい瞳を覗き込みながら、「また会おう」と言うのです。
余裕があれば、次に合うときの目印を決めておきましょう。たとえば「次に生まれてくるときも、垂れ耳、ブチ模様で生まれてきてね。初めて会ったときみたいに、大歓迎せずに無視して眠りこけていてくれたら、キミだと気づいて絶対に連れて帰るから」――といった具合に。
人間との約束は、一時この世界を離れる彼らにとって一番の励みになります。苦しみの時間から解放され、魂が光の世界へと旅立つと、今度は一日も早く再会できることを夢見て、大奮闘してくれるのですから。
煙にまかれた苦しみは、一瞬ですみました。焼けつく喉の痛みと、破裂するのではないかと思うほどの頭痛を感じたときには、すでに意識を手放していて、幸いにも彼は、火あぶりにされる苦しみを味わわずにすんだのです。
でも、なんだか不思議なところへ放り出されてしまいました。
目を開けても閉じても真っ暗です。どちらが上で、どちらが下なのかわかりません。なぜなら足はおろか、体のどこも何かに触れている感覚がないから。それだけでも大変な事態なのに、彼には自分が落っこちているのか、それとも浮き上がっているのかさえわからないのです。
でも、この状況には覚えがありました。思い出しかけているのに、どうしても出てこないのも含めて、過去に何度か経験済み。そして、間もなく解決するだろうことも、彼にはわかっていたのです。
しばらくすると、真っ暗な中に、白い小さな点が見えてきました。光です。あんなに小さいのに、暗闇に慣れた目を射抜くほど強い光が、はるか遠くから差し込んでいます。
彼は、向かうべき方向を見出しました。光に向かって進むだけ。
でも、手足を動かす必要などありません。ただ「前へ」と念じれば、白い点が少しずつ大きく――つまり、光へと近づいていけるのです。さらに「早く」と念じれば、その速度が上がります。
白い光はテニスボールほどになり、サッカーボールよりも大きくなり、ついには彼の住処だったケージを包んでもお釣りが来るほど大きくなると、一面に満ちて、すべてを飲み込みました。
ばしゃん。
水音と共に、彼はその世界へ放り出されました。長い首を潜望鏡のように一回転させても、どこまでも続いて見える遠浅の海です。
水の深さは、彼の膝のあたりまでしかありません。暖かくも冷たくもない奇妙な温度で、ずっとその中にいてもいいと思えてきます。波はとてもささやかで、ようく目を凝らさなければ、寄せては返すさまを見ることはできないでしょう。
そして、ここはとても明るいのです。見上げても太陽は見えません。けれども、それと同じくらい明るい――つまり、まともに目を開けていられないくらいの光が、空一面から降り注いでいます。
彼は周りを確かめるように、あるいは懐かしむように、その場を二、三回、くるくると回ってから、駆け出しました。
しぶきが上がり、彼の毛皮を濡らしますが、気にしません。前足を、後ろ足を蹴り出すほどに、キメが細かくやわらかい砂が肉球を包み、水かきの間を満たすのが心地好いのです。
まるで海のようですが、真水のように澄んでいて、顔にしぶきがかかっても目にしみません。だから彼はますます楽しげに、リズミカルに跳ね歩きます。
しばらくはしゃいでいると、水平線の間際に何かが見えました。遠浅の海に、彼以外の物が打ち上げられているようです。
もちろん、彼は駆け出しました。それが何なのか、一刻も早く確かめたいからに決まっています。ぴょんぴょんと跳ねるように、長い胴を伸ばしたりたわませたりと忙しくして、全速力です。
それから――人間の時間にして、三分やそこらでしょうか。彼は、お目当ての物体にたどり着きました。
金色の長い毛が、水の中で揺らめいています。照りつける強い光が反射して、それはそれは見事に輝いているではありませんか。彼は思わず「クックック」と笑いながら、金色の周りを跳ねて歩きました。
ところが、金色はぴくりとも動きません。死んでいる――はずはないので、彼はどうしたのだろうと首をひねりながら、長く鋭い爪でつついてみました。
「なあなあ」
呼びかけても返事はなし。あるかなしかの波が立てる、かすかな水音しかしません。
しかたがないので、金色の長い耳を爪でつまんで持ち上げ、そこへ直接声をかけることにしました。
「オーイ、オーイ」
「うはー!」
金色が、ドンブラコと大きな音を立てて立ち上がりました。同時に、体を思い切り震わせて、豪快に水気を切ろうとします。豊かな金色の毛にたっぷりと含まれた水分が、さながらオールレンジ攻撃のように、あらゆる方向へ振りまかれました。
当然、金色の近くにいた例の彼も、しっかりとそのとばっちりを食らいましたとも。頭から水を引っかけられたので、それはそれは無残な姿となり、もはや原型がわかりません。
「君はだあれ?」
金色が尋ねました。
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