紅き否定

「以上が今月の〈奉仕〉成果となります」

「報告ご苦労・・・・・・アリカ」



目の前の魔法少女に座るよう促され、アリカは椅子に腰を下ろした。

円形の真珠色のテーブルには他にも数名の魔法少女、それに混じって魔法使い

(ウィザード)が居、みな険しい顔でアリカの報告を聴いていた。


彼等の、身体に穴が開いてしまいそうな視線の中でも、アリカは平静だった。

それどころかどこかふざけている様にあくびをした。


アリカにとって、会議室の空気が重苦しいのは何時ものこと。

故に普通にあくびも吐けた(つ)。尤も、重要な活動報告中にその様な態度をとるのは

管理課の魔法少女の位置に就くアリカは十分非常識なのだが。


それでもアリカは、終始一貫してこれだった。

むしろ彼女は、唯の活動報告なのに、なにをこんなに皆ピリピリしているのか

理解に苦しんだ。

皆、ニンゲンの若者と大して年数の変わらぬ少年少女。

愉しく、お茶でも飲みながら進行したいものだ。



「ところでアリカ」



アリカの隣に座った魔法使い(釣り眼の老け顔)が声を掛けた。

「なにか?」と微笑むというよりかはにやけ面でそれに応えるアリカ。



「此度の、君の末妹についてだが・・・・・・」



薄暗い会議室に、魔法使いのしわがれた声が響き渡り、緊張が走る。

皆がアリカの方に視線を向ける。

誰もが暗く、不審に満ちた表情をしている。

だが、その渦中にいるアリカは、笑みを零していた。

この時を待っていたのだ、彼女は。



「良い成果は挙げられたのかね? 君はあの時皆の前で宣言しただろう、

あの者は我々に変革をもたらすと・・・・・・」



可愛らしい外見と合わぬ言葉使いと声音で話す魔法使いに、



「・・・・・・・もうやぁめた!」



アリカはそう宣言した。

会議室の中が動揺にどよめく。



「あんときあんたら、あんなに反対したのに期限が迫ったら今度は

結果をあたしに問うの? 虫良すぎませんか??」

「貴様、なんだその態度はぁ!!!」



誰かが怒鳴り散らす声が聞こえた。

アリカはその者の名前を知らないのだけど。



「まぁ良い。そろそろ我々にも聞かせてくれぬか、アリカよ。

お主の末妹が、我々にどんな利を生むのか」

「ん、イイよ! リンちゃんの頼みなら」



彼女はアリカの魔法学校の同期で、共に管理職に就いた魔法少女だ。

昔は彼女もアリカと同様、砕けた口調だったのに、管理職と言うのは

こうも人を変えてしまうか。それとも変わらぬ自分が特異なのか。

アリカは訝しげた。


物凄い形相で怒鳴り散らす魔法少女が悔しそうな顔色で座ると同時に、アリカ

は言葉を発した。



「ええ~~皆さん、突然ですが、わたくしアリカは、

魔法少女を――――否定します」



その言葉を始めとし、アリカは語り出した。

どのような目的を伴って、自分の妹を、力を剥奪された魔法少女を

下界に墜としたのか。

アリカと告白と宣言に、ある者は冒涜だと叫び、ある者は愕然と肩を落とした。


だが、これがアリカの狙いだった。

彼等のこういった顔が見たかった。

彼女はマギコが充分な結果を残した時、彼等彼女等に知らしめる必要が

あった。





如何に我々魔法を使う者が傲慢で、如何に無力なのかを・・・・・。

アリカは爽快に、現実を叩きつけてやった。





「受理、していただけますね?」



それは、マギコが六日目を迎えた日の出来事。



――――翌朝、マギコの下に、〈組合〉からの召喚状が届くこととなる。





              ▽▽▽

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