第35話 ビリビリ!
俺は今マリーとホームセンターに来ている。面倒な話だがこの後ダンジョンにまで行かなければならないんだ!
まあ、俺も少しは悪いと思うが、ホームセンターはともかくダンジョンは嫌だー!
事件は昨日にまで遡る。
――昨日
骸骨くんに惚れたうっしーはあれ以来たまに宿泊しに来る。温泉宿のお客さんが増えて悪いことではないが、とにかくうっとおしい。いつかあのホルスタインを下から上へペロンと掬い上げないと俺の溜飲を下げれないだろう。
ともかく、あのふんもおおは、宿泊すると骸骨くんについて回る。骸骨くんは嫌そうな空気をビンビン出すから、俺の癒しにならないのだ。
逃げ回る骸骨くんが俺の部屋にやって来たのは、そんな大変だった一日のお昼過ぎ。
「どうした?骸骨くん」
手で招くような仕草をする骸骨くん。誰か呼んでるのかな。
ついていくと、マリーと彼女の隣に鉄の棒に繋がれた巨大鶏が転がっている。
「お、マリーありがとう」
「いえいえー、血抜きはしておいたよー」
俺は自分の魔法を試すために、巨大鶏の羽を魔法でむしろうと考えていたから、マリーに捕獲する機会が有れば、教えてくれるよう言っておいたんだ。
「よおし、マリー。試してみるから離れていてくれ」
「んー、近くで見てないと危なくないかなー?」
「んん?」
「暴発して爆発したりー」
「マジかよ!」
俺たちが真剣に会話していると、変な鼻歌がこちらに近づいて来る......
「ふんふんふんもおー」
奴だ。おっぱいしか能がないうっしーだ。骸骨くんを追って来たんだな。
「うっしー、危ないから離れてろ。今から魔法を打つ」
「服脱がされるだけふもー、大丈夫、泣かない」
「......俺の魔法はそれだけじゃないぜ......触れると怪我するぞ」
「ふんふんふんもー」
「おー、ゆうちゃん、かっこいー」
こいつら聞いちゃいねえな。後悔するなよ。目にものを見せてくれる。
「本当にどうなっても知らないぞ!」
俺の最後の忠告も奴らは聞いちゃいねえな。ふむ。ならば震撼するがいい、我が魔法に。
俺は目を瞑り、意識を集中する。
目の魔力が一点に集積していく。
カッと目を見開き、俺は呪文を紡ぐ、
「毟りそして禿げ散らかせ!」
みんなダサいと言うから、俺もちゃんと呪文を練ったのだ。俺の考えたカッコイイ呪文と共に目から魔力が放たれる!
――ビリビリ!
ん、予想と違う音がする。巨大鶏の羽を毟るはず。しかし、何やら布が裂ける音だけど?
「ふんもおおおおー!」
うっしーの叫び声がするので目をやると、服が次々と引き裂かれていっている! ホルスタイン柄のパーカーがズタボロに裂かれると、次はスカート。彼女が下着とサイハイソックス姿になってもまだ魔法は止まらず、ゆっくりとブラのカップが中央から破れる。
うわー。これはいやらしい裂け方だ。誰だよ、こんなことやったの。
うっしーは必死で胸を抑えるが、今度はパンツが中央から裂ける。
「ふんもおおーー!」
だから来るなと言っただろう。俺はうっしーにジャケットを投げてやる。
「わたしの服も無くなっちゃったー」
うん、マリーも裸体になってる。まあ、彼女は裸になったところで、恥ずかしがったりしないけど。
「ゆうちゃん、お風呂入ろー」
「まあ裸になったから丁度いいか」
俺とマリーは泣き喚くうるさいきょぬーをほっておいて、ゆっくりと風呂に浸かる事にした。
――現在
とまあこんな事件があったから、服を買う事になったわけだ。お金も必要だから、ダンジョンにも行かなくてはいけないのだよ。
全く酷い話だよ。誰だよほんと。
マリーとしもむらでワンピースとパンツを買い、その足でそのままダンジョンに向かう。
今日は特に指定するモンスターもいないから、巨大鶏を捕獲して帰路に着く。
順調過ぎて怖いくらいだ。大丈夫か?
で、うっしーは結局どうなったんだろうか。咲さんに聞いてみると、宿の浴衣で過ごしているらしい。まだ泊まってるのかよ! 服は? あ、浴衣じゃ買いに行けないのか。
それなら、軽トラックでうっしーを家まで送り届ければよいかな。
俺はおっぱいが浴衣から零れ落ちそうなうっしーを見つけ、服について相談する。
「うっしー、家に帰れば服あるんじゃないの?」
「ふんも、予備を今持ってない」
「その姿じゃ、買い物厳しいだろうから家まで送ってこうか?」
「い、家まで......一体何されるふもおおお!」
頰を真っ赤に染めてうっしーが叫び出す。あかん奴やこいつ。いや、もう分かってるけど。
「家に行っても中には入らん! 服無いんだろ?」
「服無い......襲われるううもおおお!」
「うるせえ! これ以上叫ぶとその無駄にでかいのを下から上にペロンとするぞ!」
「どうぞ、どうぞ」
待てこら! そこでそう来るのかよ。駄目だ奴のペースにしては。
「家は何処にあるんだ?」
「三十九階ふもお」
「ダンジョンかよ! モンスターどうなってんの?」
「大人しいのしかいないの」
「ほう。ダンジョンなら服装気にしなくていいだろ。さあ帰るがいい」
「送ると言ったも。嘘つきいいい!」
「意味分からんテンション過ぎるぞ! 分かった。マリー呼んで来る」
「勇人もついてきて」
「生意気言うなー!」
余りに興奮して疲れたが、いつの間にか来た骸骨くんが肩をポンポン叩いて慰めてくれた。ふう。
ふもふもうるさいから、仕方なく俺はダンジョンへうっしーを連れて行く事にした。
安全確保の為、マリーと骸骨くんを連れてうっしーを荷台に叩き込み、軽トラックに乗り込んだのだった......
咲さんをこんな事に付き合わせる訳には行かないからマリーにしたのだ! クソ猫も置いて来た。
しかしまたダンジョンか。好きじゃ無いんだがなあ。
◇◇◇◇◇
いつものようにダンジョンの前で軽トラックを停車して、マリーに先行してもらい、うるさいエレベーターに乗り、三十九階に到着した。
そこは、のどかな牧場が広がっていたのだ!
「さあ、うっしー着いたぞ。家に帰れ!」
「ふもおおお。せっかくだから牛乳でも飲んでいって欲しいふもお」
「おー、牛乳ー。飲みに行こうよー」
マリーめ、余計な事を......まあ、せっかくだからご馳走になるか。
俺はまさか牛乳でトンデモナイ目にあうと、この時思っていなかった......
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