第237話 戦乱の予感……?


 さて、十八歳になった俺だが、どうやらレミアリアとお隣のヨールデン小国以外の国ではとんでもない戦乱状態らしい。


 こんな混沌とした状態を作った張本人が《アールスハイド合衆国》だ。

 なんとまぁ、《ダージル国家》というテロリストに百パーセント占拠されてしまい、事実上アールスハイドは滅んだ。

 そしてダージル国家が《アーテライテ大陸》を支配したんだ。

 正直レミアリアうちとアーテライテ大陸は遠い場所にあるから繋がりはゼロの為、全くもってアールスハイドが滅びたとしても影響はなかった。

 ところがどっこい、こっからがこのテロリストの迷惑な所。

 ついにはアーテライテ大陸制覇だけでは飽き足らず、他国にもちょっかいを出すようになった。

 

 すでに被害を受けているのは、内戦真っ只中な《ロザミア人民共和国》と《救神国ザキミア》だったりする。

《サザーランド大陸》はこの二つの国家が存在しているんだけど、現在どちらが大陸の覇者になるかを争っている最中。

 国境線でくんずほぐれつの拮抗した戦いを常に繰り広げていたのだが、ダージル国家が第三勢力として横槍を入れたんだ。

 皮肉にも拮抗していた戦いは、ダージル国家という劇薬が加わった事で崩れ、国民大迷惑の阿鼻叫喚らしい。


 しかし俺達も笑ってはいられない。

 もし万が一でもダージル国家がサザーランド大陸を制覇してしまった場合、たった六十キロメートルレーズしか離れていない《ボーテクス海峡》を使って、うちに侵略しに来てしまう。

 今現在、我が国の王様はどのような対処をすべきかを国の重鎮達と会議しているのだった。

 この重鎮達の中には公爵俺達は含まれていない。

 理由としては、まだこの三つの勢力の戦いはどっちも優勢ではなく、上手い具合に疲弊している状態だからだ。

 その為まだ各担当大臣と王族で念密な計画を練って、きな臭い情勢になったら公爵俺達にも話が下りてくるみたいだね。

 全く、世界が変わってもテロリストがやる事はあんまり変わらんなぁ。

 

 だが、何故たかがテロリストがこんなに勢いをつけたのか?

 それはダージル国家の背後に二つの勢力がいるからだ。

 まず一つ目の勢力が《武力派》だ。

 こいつは俺ともちょっと因縁がある勢力だったりする。

 レミアリアは芸術国家と名乗っているが、まぁ軍事力は二の次になっていたんだ。

 防衛などの関係で普通の国家なら軍事力や武力を優先的に増強する筈なのだが、うちは違った。

 うちの場合は芸術という点で他国より抜きんでていて、後の芸術家を育てる為の学校も作った。

 これのおかげで他国の重鎮の息子が留学してくる。

 つまり、相手に不審がられる事無く、他国の重鎮の息子を人質に出来たんだよね。

 こういった背景があるので、他国からもそこまで攻撃をされる事がなくなったんだ。その結果、軍事力は最低限確保って事で良くなった。


 ——訳なんだが、まぁ納得しない奴らが出てくる。

 所謂武力でのし上がってきた奴らだ。

 彼等は芸術を憎み、武力こそ全てを掲げて《武力派》という過激派組織を設立。レミアリアを軍事国家に仕立て上げようと色々裏で動いていたんだ。


 しかしまぁ、俺がちょいちょい関わっちゃって、奴らの陰謀を叩き潰した事もあり、レミアリアから撤退したようだ。

 それでも奴らはただじゃ転ばない。

 あのバカ共は他国に目を付けた。

 そうする事でサザーランド大陸の内戦を激化させ、ダージル国家を全面的に支援する事でアールスハイド合衆国を結果的に消滅させるまで勢いを付けさせる事に成功したのだった。


 二つ目の勢力が《ドールズ商業連合国》だ。

 基本的に中立という立場だった筈なのに、突然ダージル国家を全面支援。

 ダージル国家の食糧支援やら武器の販売、そしてこの世界で初の重火器を提供したようなんだ。

 どうやらダージル国家に重火器を使って世界にアピールをし、莫大な利益を産もうとしているようだった。

 その思惑はかなり上手くいっているらしく、アーテライテ大陸の独占販売権を獲得した位だ。


 さてこの重火器、前世の地球で使われていた中世の大砲とそっくりなんだ。

 城壁だって簡単にぶち破れるし、大爆発だって起こせる。

 この事から、俺はドールズの中に前世が地球出身で、重火器の知識が豊富な転生者がいるのではないかと睨んでいる。

 まぁうちの嫁であるアーリアも、拳銃とスナイパーライフルをドールズから購入したんだけどね。

 今、俺の諜報部隊である《黒狼》を使って、発明者を特定しようとしているが、あまり結果は芳しくない。


 まぁこういった理由で、各国で戦いが起きているんだけどね、レミアリアは平和な訳だよ。

 その証拠に、ほら――


「とおちゃん、おれと剣の勝負だぁ!」


「おっ、今日も元気だな《ランス》! じゃあ早く仕事を終わらせるから、訓練場で待っててな!」


「へへ、うんっ!」


 俺の長男であるランスが今日も剣の勝負を挑んでくる。

 奥さんの一人であるレイとの間に生まれたランスは、レイの影響を多大に受けたのか剣術大好きっこの二歳。

 この世界は相変わらず成長がとんでもなく速い……!

 二歳にも関わらず、言葉は舌足らずながらによく喋るし、見た目は前世感覚でいったら四歳位かもしれんな。

 ただ、超早熟故か、この世界の人々は短命で平均寿命は五十歳前後だった。


 ランスの頭を撫でると、とっても嬉しそうにしてくれる超可愛い息子だ!

 俺はもうデレッデレである。

 見た目に関しては、髪の色はレイの髪色を引き継いで茶髪。

 しかし瞳の色は俺と同じ碧眼だ。顔立ちは俺とレイのいい所を取って混ぜ合わせた感じで、中性的な感じだ。

 将来こやつも女泣かせになるかもしれないなぁ。


「さて、ちゃっちゃと仕事を終わらせて、ランスと遊ぶかな」


 世の中は戦乱状態だが、うちは至って平和だった。

 いやぁ、平和っていいよなぁ……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る