第180話 会議? いえ、下ネタ談義です


 ああ、何でこんなにも世界が輝いて見えるんだ!

 理由はわかっているさ、昨日と今朝の素晴らしい体験こそ、世界をここまで美しく彩っているんだろうさ!

 ほら、今食べているスクランブルエッグなんて、まるで黄金のような輝きを放っているではないか。

 添えられている野菜ですら、瑞々しく感じる。

 童貞を卒業するって、こんなに素晴らしいんだな!


 いやぁ、しかし本当、女の子の体ってすげぇ柔らけぇんだよな。

 ずっと触ってて全く飽きが来ないし、ずっと一緒にいたいって思ってしまうんだ。

 前世でハニートラップやら業界では枕営業とかあるけどさ、当時の俺は「何で女の体位で重要な仕事をぽんぽんやっちまうんだ?」って思っていたさ。でも味わってわかった。


(女の体は、麻薬よりやべぇわ……)


 ハマる、どっぷりとハマる。

 それ位に危うい魅力を放っている。

 視覚嗅覚、行為中は聴覚まで刺激してきて、求めずにはいられないからなぁ。

 しかし、リリルのおっぱい、やっぱり破壊力はとんでもなかったです、はい。


「……ハル、鼻の下伸びてる」


 おっと、レイにジト目で指摘されてしまった。

 流石に朝食中に情事を思い返すのははしたなかったな。

 しかし、本当朝食美味いぜ!

 激しく運動した後だからだろうなぁ、とても食事が美味しいのだ!

 ガツガツ食っていたら、いつの間にかパンがなくなっていた。

 ありゃ、まだおかずがあるのになぁ……。


「ハル君、パンのおかわりいる?」


「おっ、頼めるか? リリル」


「うん」


 リリルが微笑んでキッチンに向かっていった。

 何ていうか、少し大人びた?

 たった一夜で、あんなに変わるもんなのかね。


「ハル、昨日はお楽しみだったじゃないか」


「何だよ、聞いてたのかよ、レイ」


「聞いてたんじゃない、聞こえたんだよ!」


 そんなに大きな声出してたのか?

 いやぁ、夢中で全然気付かなかったわ。


「今日も僕かアーリアを相手してもらうんだからね、しっかり元気残しておいてくれよ?」


「そこは全然大丈夫なんだけどさ」


「……大丈夫なんだ」


「まぁね。それで、今晩は、誰?」


 今晩はアーリアかレイと致す事になっていたようだ。

 誰なんだろう、すっげぇ気になる。

 心臓がとってもドキドキするんだよ!

 すると、アーリアとレイが同時に「「内緒」ですわ」と言ってウインクしてきた。

 ううう、気になって仕方ない!


「ハル様、本日は領地に関する打ち合わせの為、後二十分程でカロル様が来られるご予定でしたよね? しっかり思考を切り替えてくださいませ?」


「あっ、そうだった! 確かカロルさんが建築職人さんを紹介してくれるんだったよな。すっかり忘れてたわ」


「しっかりしてくださいませ? 大事なお仕事なのですから」


 むーっと怒った仕草を見せるアーリア。

 迫力が全くなくて、とても可愛い。頭を撫でたくなる衝動に駆られるが、何とか踏み留まった。


「ハル君、はい、おかわりだよ」


「ありがとう、リリル」


 ああ、本当俺は幸せ者だなぁ。

 綺麗で愛しい三人に囲まれて過ごせるんだ、きっと日頃の行いがいいから、女神様がご褒美をくれたのかもしれないな。


「そんなご褒美はあげてません」


 また女神様の声が頭の中に響いた。

 ぜってぇ暇してるだろ、女神様。

 下手くそな口笛が聞こえる。

 女神様に音楽の才能はなさそうだな、こりゃ。














「ハルさん、顔緩みっぱなしですよ?」


「うへ? あぁ、わりぃ」


 総勢三十人の職人さん達プラス俺とカロルさんという面子で、うちの屋敷の会議室を使って打ち合わせを行っていた。

 だけど、昨日のリリルの体の感触をまた思い出してしまい、正直あんまり会議内容が頭の中に入ってこなかった。


「どうせ、昨日三人の奥様の誰かと初夜を迎えたから、それを思い出していたのでしょう?」


「……まぁ、そうなんだけどさ」


「職人の皆さんは忙しい中時間を作ってここに来ているんです、貴方がしっかりしないで――」


「いや、大丈夫だ!」


 カロルさんから軽く説教を受けかけた時、彼の言葉を遮った人物がいた。

 建築職人の親方だった。


「カロルさん、ちょっと気になる事があったから、ハルの旦那に質問してもいいか?」


「え、えぇ。いいですよ」


「それじゃ、ハルの旦那!」


「は、はい。なんでございましょうか?」


 親方は全身筋肉質で体毛も濃い、熊みたいな中年男性だった。

 とてつもない剣幕で質問され、俺は一瞬たじろいでしまう。


「お相手は誰だったのですか?」


「……は?」


「初夜のお相手は誰だったか聞いてるんです!!」


 はっ!?

 そんなの聞いてどうするんだよ!

 答えるのを躊躇っていると、「早く、早く!」と圧力をかけてくるんだよなぁ。

 しかも親方だけじゃなく、カロルさんが呼んだ職人全員で圧力をかけてきやがる。

 何でそんなに知りたがってるのさ!


「……リリルだけど」


 俺が答えると、三者三様の反応を見せる職人さん達。

 何だ、どうしたんだ?

 ある人は天に両手を上げてガッツポーズを決めて喜んでいるし、ある人は下を俯いて唇を噛んでいる。一喜一憂っていうのかな、こういうの。


「な、なぁ、カロルさん。なにこれ」


「さ、さぁ……」


 カロルさんもわからないらしい。

 本当、なんやねん、この状況は。


「あんたら、何でそんな嬉しそうだったり落ち込んでたりしてるのさ」


「あれ、ハルの旦那は知らないんで?」


「ん?」


「とある酒場で『どの奥方がハルの旦那の初物を奪うかトトカルチョ』というのをやってたんですよ。俺達全員賭けていましてねぇ、俺は勝ちました!」


 おおおおおおい!

 人の嫁さんで賭け事してんじゃねぇよ!!

 つまり喜んでいる奴は予想的中して、落ち込んでいる奴は予想が外れたって事か!?

 何やってんだよ、あんたら!!


「それで、どうでしたかい? リリル婦人は!」


「内容まで聞くのかよこの野郎!」


「そりゃ聞きますわ! 旦那の嫁さんはね、男なら誰でも憧れる女性のタイプなんですぜ!?」


『そうだそうだ!!』


「お、おぅ」


 まぁあの三人は確かにそうだよなぁ。

 リリルは可愛いロリ巨乳だし、レイは色気たっぷりお姉さんだし、アーリアは可憐で清楚なお姫様。

 そう考えると、それらを独り占めしている俺って、随分と恵まれてるよな。


「それで、どうだったんですかい! 教えてくだせぇ!!」


「ふ、ふふふ、いいでしょう! 俺の体験談を聞くがいい!!」


『いよっ、大将!!』


 この会議は結局中断され、昼になるまで下ネタ談義をし始める俺達。

 カロルさんはかなり呆れていたのだが、いつの間にか談義の輪に参加していた。

 各々の体験談(エロ系)を発表し、感心したり笑い飛ばしたりして楽しんだ。

 全然会議にならなかったが、この談義のおかげで団結力が強まり、以降の領地開発は円滑に進んだ。その詳しい話はまた後程って事で。

 やっぱりね、仲良くなるには下ネタが一番だ!

 だが、最後に皆に言われた事があった。


「旦那、一回爆発しろ」


『激しく同意』


 あのカロルさんですら同意しやがって、この瞬間だけは俺に味方はいなかった。

 ふっ、爆発はしてやらねぇよぉだ!!

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