第15話 私から見た、ハル君
私は、リリル・バードウィル。
今年で七歳になりました。
今日は、ハル君についてお話したいなって、思います。
初めて会ったのは、五歳の時で、学校の入学式でした。
私は周りの男の子からは、喋り方がとろいとか、キョドりすぎだってからかわれていました。
きっと目の前にいる男の子も、そう言うのだろうな、そう思っていたけど違いました。
「よっ、俺はハル・ウィードだ。よろしくな!」
明るい声で、しかも笑顔でそう言ってきました。
その後は私の喋り方には何も言わず、普通に話してくれました。
嬉しかったな。
あっ、ハル君は火のように真っ赤な髪をしていて、でも笑った時が大人のように感じました。
いばっている訳でもないし、大人の先生とかでも堂々としてるし、すごいなって思いました。
そしてレイ君ともお知り合いになって、学校楽しくなりそうだなって思いました。
魔法に関してはユニーク魔法に目覚めちゃったみたいです。
それをハル君から聞いた時、私とレイ君は本当に心配しました。
だって、大抵のユニーク魔法使いは、自分で死んじゃってるって知っていたから。
でもそこからハル君はすごかった。
私達には見えないシャボン玉を作るしか出来ないって思っていた魔法を、ハル君はじっくり考えて、それで属性が《音》だっていうのがわかっちゃったんです。
本当にすごかったのは、《音》の魔法を使って、アンナ先生に勝っちゃった事です。
本当にすごい!
とっても格好良かった!
先生達もハル君の事を気に入ったようで、魔法戦技の授業では、いろんな先生がハル君の相手になってたりしてました。
すごいなぁ、五歳なのに先生とこんなに戦えちゃうなんて。
私の友達は、とっても凄い男の子でした。
ちょっとした事件がありました。
ハル君とハル君のお父さんが森のドラゴンに襲われました。
でも、ハル君のお父さんの左腕がなくなっちゃっただけで、二人で倒しちゃったんです!
大人達は二人をすごいすごいって褒めていたけど、私はハル君に何もなくて、本当によかったって、心の底から思いました。
だって、大事な友達だもん。すっごい心配しました。
でも、多分私の気持ちが変わったのは、六歳の誕生日の時です。
私の家族とレイ君で、私の誕生日を祝ってくれました。
皆でのお食事、楽しかったな。
でも、ハル君は用事があって遅れるって言っていたので、その時はまだいませんでした。
もうちょっとでご飯を食べ終わるって時に、ハル君は家にやってきました。
「遅くなってごめん! 誕生日おめでとう、リリル!」
ハル君は笑顔で、花束をくれました。
誕生日の時に何かを贈るっていうのはしないんだけど、ハル君は森で花束を作って、私にくれたのでした。
「リリルに似合った花だったからさ、誕生日にプレゼントしたかったんだ」
「ぷれ……?」
「あぁ、まぁ何かをあげたかったんだよ。生まれて来てくれた事に、最大の感謝を!」
ハル君がくれた花は、白い薔薇。
とっても綺麗でした。
多分、私が友達から恋心に変わったのは、この瞬間です。
前からアンナ先生との戦いを見た後、友達以上に思っていたと思います。
でも、完全に好きになったのは、花束をもらった時です。
それから私は、そばにいたいから出来るだけハル君の横にいます。
だって、ハル君は女の子からすごくモテます。
最近たくさんの女の子から話し掛けられて、ハル君は嬉しそう。
でも、それを見ると、私はむーって思っちゃいます。
胸が苦しい、ムカムカしちゃいます。
私の方が、ハル君の事が大好きなんだもん!
たくさんの女の子に囲まれて、デレデレしているハル君。
その時はムカムカしちゃったので、その日一日は口を聞いてあげませんでした。
「お、俺何かしちゃったか、リリルに何かしちゃったか、レイ!?」
「しししししてててないとと思うからぁぁ、ゆさぶらららないでぇぇぇぇくれぇぇぇぇぇ」
あの慌てた姿、ちょっと可愛かったです。
次の日にはいつも通りに接しました。
七歳になった頃、胸が大きくなってきました。
それから色んな男の子が私の所に来るようになりました。
綺麗だとか、可愛いって言ってくれます。
でも、何故か嬉しくありません。
だって、それを言われたいのは、ハル君なんですから。
それにあまり知らない男の子に言われて、結構怖く思っていました。
試しにハル君に相談したら――
「なら、俺のそばを離れるなよ?」
「う、うん!!」
ハル君は私にとっても優しくしてくれます。
時に何だか、お父さんみたいに思っちゃいます。
でも他の女の子と比べると、私の方が特別のように感じるから、嬉しいです。
でも最近悩みが出来ました。
「ハル君、私と付き合ってください!」
四年生の女の子に告白されている所を目撃しました!
とてもハキハキしてて、可愛らしい人です。
は、ハル君は何て答えるのかな……?
「……すごく嬉しいけど、ごめん。俺、もう心に決めた人いるから」
えっ、ハル君、好きな人いるの?
誰なんだろう……、すごく気になります。
その後女の子は泣いちゃったんだけど、泣き止むまで頭を撫でて落ち着かせていました。
優しいな、ハル君……じゃなくて!
好きな人、いたんだ……。
何でだろう、胸がすごく痛いです。
理由はわかってる。
私以外に好きな人がいるって思ったら、とっても嫌な気持ちになりました。
だって、その人と付き合っちゃったら、きっと私は今までみたいに、ハル君の隣にいられなくなるから。
その事をお母さんに相談したら――
「リリル、さっさと告白しちゃいなさい!」
「え、えぇぇ!? む、無理、だよ。そんな、の、恥ずか、しいし、私、なんかじゃ――」
「じゃあ、ハル君が他の子に取られちゃうわね」
「っ! 嫌、それは嫌!」
「なら、やる事は一つよね?」
「ぅぅぅぅぅぅぅ……」
そうだよね、自分から動かないと、ハル君に振り向いてもらえないよね?
私、ハル君に告白します!
居心地が良いハル君の隣は、私の物だから!
……そう決めてから四ヶ月経ちました。
恥ずかしすぎて無理です!
あぁぁぁ、恥ずかしいよぉ!
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