カグヤ姫が求婚者に「魔王を倒してきて」と難題を出した結果 ~ 辻褄合わせの竹取クエスト ~

真尋 真浜

序章


 昔むかしの物語。


 クーネカラム大陸の東方に位置する島国ユマトには、一人の美姫がいた。

 その名をカグヤ。


 彼女は美しく、古今東西に通じる博識で、占術魔道にも長けたとしてユマトのみならず近隣諸国にもその噂が轟くほどの才媛だった。


 そんなカグヤの噂を聞きつけ、彼女を一目見ようとする人が列を為し、彼女を娶りたい・召し上げたい旨の縁談話は後を絶えなかったという。

 聡明な彼女は一計を案じ、


「ひと時の迷い、浮ついた思いで我が身を欲したのではないと納得させて欲しいのです」


 このように発し、求婚者達にそれぞれ試練を課した。


 ある者には『神の門を開いたというイモータルの用いた石の鉢』。

 ある者には『仙境ホウライに生えるという金銀宝玉の枝』。

 またある者には『真炎に鍛えられ、いかなる炎にも焼ける事のない火ネズミの皮鎧』など、幻の逸品と呼ばれる物を手に入れる事を求めたのだ。


 彼女の告げた荒唐無稽とも取れる難題は、されど偉大なる先人の書き残した古書・奇書の類に記された品々であったため、誰もそれを「存在しない物だ」とは言えなかった。


 ある者は無礼であると怒り、ある者は金に任せて幻の品を遠方より取り寄せようと計らい、またある者は彼女を言いくるめて篭絡しようと論戦を挑み──


 かくして軽い気持ちで彼女を欲した者たちは早々に脱落し、彼女の要求に応えようと難題に挑んだ勇者たちも未だ事を為しえた者は存在しなかった。

 これらの噂はさらなる評判を呼び、カグヤの元を訪れる殿方の列は絶えなかったのである。


 そしてこの日も、彼女の元にひとりの求婚者が現れる。

 その男に対しても例外なく、カグヤは真意を試すべくクエストを発したのだ。


「魔王を倒し、囚われの姫を助け出してください」


 これは巷で評判の美少女カグヤと彼女に求婚した青年の物語である。


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