あの時本当は少しも君を好きじゃなかった

サシマ エイジ

plorogue

君は私の太陽だ。


明るく輝いて

私を、みんなを

照らしてくれている。




でも私にはその光は眩しすぎて

君の真っ直ぐな強い輝きに

向き合うことができなかった



眩しくて、ずっと見ていられなくて、

ぐっと強く目を閉じた。

さらに手で瞼を覆って。




これ以上見なくてもいいように。

辛くならずにすむように。





いや、そもそも私はちゃんと君を見たことがあっただろうか。


君と目を合わせたことはあっただろうか。



私と同じ場所にいる人達は皆同じことを言う。

"しょうがない。ずっと見ていたら何も見えなくなってしまうのだから"



彼らのものか、私のものなのか分からなくなったその声を

いつもどこかで言い訳にして目を閉じ続けていた





それでも私は君の隣に居たかった




君の隣で、君と同じように、

輝く笑顔で

皆を照らしていたかった




私のいる日陰から出た君の照らす場所は

いつも暖かくて、

まるで私も温かい何かになれたような気がして。


だからもっと、君の近くにいきたかった。




でもこれ以上手を伸ばしてしまうと

きっとその光で

その熱さで

あたしは消えて無くなってしまうのだろう



でも

それでも

私は君の近くにいきたいと、いたいと思ってしまった



たとえこの目が見えなくなってしまおうとも。

たとえこの身体がこの世から消えてなくなってしまおうとも。



それでも私は君の近くにいたかった。


何かが変わるような気がして


私も君のようになれるような気がして




でもそれは間違いで、

自分が照らしていると思っていたその光は

やっぱり君のもので。



何も変わってなんていなかったのに。



それに気づいてもなお、

私は君を見続けて

君のそばに居続けた



あたしの目に映るものは、君だけで充分だったから。



この世界が私の目に映すものはいつもモノクロで、美しさなんて知らなかった。


だから君に出逢ったあの時あの瞬間、世界が色を帯びて変わりだした。





この世界は残酷だ。



それでも、

とても美しい。





それを教えてくれたのは君で、一番美しいのも君だった。



だから

君だけで充分だった。




二度と見えなくなってもいい



今君を見つめることができるのなら。


君の姿をこの目に焼き付けることができるのなら。


最後にこの私の目に映るものが君であるのなら。




もう、何も見えなくなってもいいと思った。





たとえこの身体が世界から消えてなくなってしまうとしても



君を強く抱きしめられるのなら。


この手で君の顔を包み込めるのなら。


君の温かさを、君の感触を、

この身体で確かめられるのなら。



そこに、その隣に私が確かにいたのだと、君と一緒の時間の中にいたのだと信じられるのなら。



この身が滅びても、全てを失くしてもいいとさえ思った








君は私の太陽だ




皆を照らすその暖かく美しい光は、私にはあまりにも遠く眩しすぎた。



でも

だからこそ




私は君になろうとした




君と同じ場所に行きたくて。


君の見ているものを私も見てみたくて。



君が私を暖かく照らしてくれたように、私も君を照らしたかった。









君は私の太陽だ




だから私は、





君になりたかった







prologue end...

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