どうてい!~過疎化の進む田舎の集落に少子化対策で招待された俺はあの手この手で美少女たちから迫られまくってもう限界かもしれない

秋月一歩@埼玉大好き埼玉県民作家

第一章『童貞、限界集落で限界ギリギリの生活を始める』

いきなり神社に監禁されて緊縛! 童貞喪失の危機!?

「ほら、さっさと誰を選ぶか決めなさいよ!」

「あ、あの……わたしでしたら、いつでも準備オッケーですから」

「さ、はやいとこ、ちゃっちゃと選んでください」


 三者三様に迫ってくる女の子たち。俺、田々野凡人(ただのぼんと)はいまだかつてないピンチを迎えていた。


 なぜ、人生十七年非モテ街道を驀進(ばくしん)してきた俺がこんな状況に置かれているかについては、説明せねばなるまい。


 きっかけは、ネットを巡回中に見つけたとある広告だった。


『若い男子求む! 限界村体験入村!』


 文字どおり、人口減に悩む限界集落が若い男を体験入村させるというキャンペーンだった。別に、いますぐ定住しなくてもいいらしく、高校生でも応募可とのことだった。


 ちょうど俺は夏休みを持て余していた。休みが始まったばかりだというのに、特に出かける予定もなし。校則でバイトは硬く禁止(超進学校なので、停学どころか退学になる)。ついでに特進クラスなので部活にも入っていない。一緒に遊びに行くような友達もいない。毎日ネットをやっているだけ。


 ……そんな半引きこもり生活にも飽きてきていたので、つい、そんなわけのわからんもんに応募してしまったわけだ。


 応募フォームに必要事項(住所年齢名前)を記入して送信すると、一週間後には向こうから当選メールが来て、その翌日には飛行機と特急券、そして、最寄り駅までの切符が郵送されてきた。


 正直、その手際のよさというか、交通費全額負担の大盤振る舞いに、腰が引ける思いがあった。


 なぜ、ここまでしてくれるのか?


 もしかすると、なにかの詐欺とか、向こうに行ったらものすごい強制労働をさせられるんじゃなかろうか、とか……不安が首をもたげたのは確かだ。


 でも、なにより俺は暇だった。


 それに、ここまでしてもらってキャンセルだなんて、向こうにも申し訳ない。そう思って、飛行機と特急電車とローカル線の電車を利用して、海を越え山を越え、この地へとやってきたのだが……。



 改めて俺は、取り囲んでいる女の子たちの顔を確認した。


 メイド服を着て顔を真っ赤にして怒っているのは、俺が滞在することになっている民宿『草枕』の一本木(いっぽんぎ)まつり。黒髪で、ツインテール。身長は百六十センチぐらいか。贅肉のない引き締まった体をしているというか貧乳である。年齢は俺と同じ十七歳とのこと。


 次は、一見、ただの小学生。だが、先ほど年齢を聞いて驚いた。俺より一コ下だという。身長は百三十センチぐらいだろうか。ピンク色の丸い髪飾りを二つつけていて、そこからぴょこんと髪が左右に跳ねている。


 まつりと同じく顔を赤くしているが、どこか恥ずかしそうに下を向きながら、指を絡めあっている。名前は、三月兎(さんがつうさぎ)ひなた。


 そして、最後の一人は、巫女装束を着ている。身長は俺と同じぐらいだから、百七十ぐらいか。前者二人が顔を赤らめているのに、こちらはいたって冷静沈着な無表情。色白で端正な顔立ちであり、和風美人といった風情だ。

 ……ただ、こけしと向かい合っているようで、なにを考えているのかわかりにくい。名前は、二枚貝(にまいがい)あずさ。年齢は一つ上の十八歳。


 さて。では、なぜ俺がこの三人の美少女に迫られているのか。


「あの……わたしは、サッカーチームができるぐらいほしいですっ……」


 いちばん子どもっぽい容姿のひなたちゃんが、いきなり過激なことを言いはじめる。


「あ、あたしは……二人いればいいかな」


 それに続いて、まつりが恥ずかしそうに横を向きながら、呟く。


「わたしは、一人で」


 最後に、あずささんが特に感情を込めずに言う。


 彼女たちがなにを言わんとするか、おわかりだろうか?


 俺は先ほど、俺を村に招待した衝撃の理由を聞かされたので、わかっている。

 ……でも、理解はしていない。いや、理解を超えていて、理解できていない。


「……い、いや、ちょっと待て! なにがどうしてこうなった!?」


 俺は目の前の誘惑を振り払って、疑問を口にする。そう。そうだ。こんなのフェアじゃない。

 ……ってか、倫理・道徳・教育的に考えて、たいへんよろしくない!


「もー! さっきも説明したじゃないっ! だ、か、らっ! あんたはあたしたちの子作りのために呼ばれたの!」

「そ、その……末永くよろしくお願いいたしますっ」

「そういうわけですから、村のため、神妙に身を捧げてください」


「い、いやいやいやいやいやいや…………」


 改めて、俺は想像を絶する展開に圧倒されていた。


 ……いやさ、ここへ来る途上、田舎の純朴な女の子と仲良くなれたらな~という思いが、まったくなかったとは言わない。


 でも、これはいきなり超展開すぎるだろう! 


 まさか、来た初日からこんなことになるとは。というか、そもそも、最初からそれが目当てだったとか!


「あの……他の参加者はいないんですか?」


 そうだ。俺の他に誰も被害者がいないなんておかしい!


「あー、いちばん若いのあんただったから、他はみんなお断りした」


 そ、そんな……。つまり、生贄は俺だけだというのか?


「や、やっぱり……そ、そのっ……若い精子のほうが、いい遺伝子残せそうですっ……はうっ……」


 いや、だから、そんな子どもっぽい容姿で、惜しげもなく過激発言ばかりしないでくれ、ひなたちゃんっ。


「ちなみに、最高齢応募者は九十八歳でした」


 あずささんが手元のメモを見ながら、そんなことを言う。


 もうそれ、年齢が限界というか……限界集落化にまったく歯止めがかからないんじゃないか……。


「……この村に若い男はいないのか?」


 素朴な疑問だ。いくら限界集落っていっても、こんなに若い女の子が三人もいるんだから、他に若い男子がいてもおかしくないだろう。


「いないから、あんたを呼んだんでしょうが!」


 またまつりから怒られる。初対面であんた呼ばわりされまくっているので、心の中でも呼び捨てにしている。


「そ、そうなんですっ……わたしたちをのぞくと、次に若いのはまつりちゃんのお母さんなんですっ」

「ちなみに三十五歳になりますよね?」

「ん、そう。三十五になったばっかり」


 ……なんて偏った人口分布なんだ。


「……隣の村とかに若い子はいないのか?」

「いない」


 即答で返ってくる。そうなると、けっこう孤独かもしれない、自分たちのほかに若い子がいないとなると。


「で、でも……会ったばかりの見知らぬ俺と、いきなり、それは……」

「もう、ごちゃごちゃ言ってないで、あたしたちと子作りしなさいよ!」

「は、はぅ……ドキドキします」

「安心してください。村長公認、親公認、長年続いてきた村の伝統ですから」


 い、いやいやいやいやいやいや……。なんという伝統だ。田舎おそるべし。俺の抱いていた田舎の純情美少女幻想が木っ端微塵にぶち壊れてしまう!

 しかし、このまま流されてしまったら、とんでもないことになる!


 俺は頭をぶんぶんと振って、天使と悪魔の誘惑(どちらも誘惑しか囁いてこなかったが)を追い払う。


「健全な青少年たる俺は、謹んで、お断りします」


 健全な青少年たる俺の性欲とか性欲とか性欲とかを封じ込めて、俺は言い放った。俺の大切な童貞をそんなことで揺るがしてはいかんのだ。


「はぁ!? 信じらんない!」

「わ、わたしたち……魅力がないんでしょうかっ……」

「痩せ我慢ですね」


 ……ご名答だ、あずささん。

 だが、そんななし崩し的に、関係を持ってしまうだなんて、不潔よ、不潔っ!


 俺は生真面目な女子風紀委員長のような心持ちで、この千載一遇のチャンスをぶっ潰すことにした。


「……そういうわけで、俺は帰る。俺は……俺自身が清く正しく美しく童貞であり続けるために、帰宅する」

「はぁ!? なに言ってんのよ! あたしたちに恥かかせておいて、このまま無事で帰れると思ってるわけ!?」


 え、ええっ……。いや、そんなこと言われましても……。


「せ、せっかく捕まえたんですっ……逃がしませんっ」


 と言いながら、ひなたちゃんが俺の腕を掴んで体を密着させてくる。


「まったく、困った人ですね」


 あずささんはというと、巫女服の胸元から紅白の紐を取り出した。って、どこにナニをひそませてるんですか!?


「さ、覚悟してください」


 そう言いながら、紐を手にジリジリと近寄ってくるあずささん。いかんっ、これはシャレにならない!


「ほら、逃げないのっ!」

「うぐっ!?」


 背後からまつりが抱きついてきたかと思ったら、羽交い絞めにされる。なんという怪力だっ! だ、だが……。


 く、くうぅ……体を絞めつけられるよりも、背中に当たる胸の感触に慄いてしまうのは、童貞がゆえか……やっぱり、貧乳っぽいけど。


 ……って、いかん! このままでは本当に身の危険を感じる。なんとか現状から脱出せねばっ!


「……は、話せばわかるっ! それが民主主義だ!」

「問答無用です」


 俺の必死の訴えも、テロリストのような冷徹な一言でバッサリと斬り捨てられる。


 そして、あずささんは淡々と俺の体を縛り上げていった。

 見事な手際だ。……ちょっと食い込むのがいいだなんて、とても言えない。


「さて、どうしましょう」


 ひと仕事終えたとばかりに、パンパンと手を叩きながら、あずささんは他の女の子たちに訊ねる。


「そ、それじゃ……最初は、わたしがっ! がんばりますっ!」


 うわぁ、だから、なんでそんな子供っぽい容姿なのに積極的なんだ、ひなたちゃんはっ。やめてくれっ、決意が揺らぐ!


「だーっ! だから、だめだって! そんなの健全じゃない! フェアじゃない! 絶対にあとで後悔するって! 黒歴史決定だぞ!」


 紅白の紐で芋虫のような格好にさせられながらも、俺は必死で積極的すぎる彼女たちに訴えかける。


「人生に大事なのは、純愛だ! 結果よりも、過程が大事なんだ! 一方的な陵辱の果てに幸せなんてない! 見ろ、バッドエンディングがゴミのようだ!」


 我ながら、意味不明のことを口走っていた。それでも、ここで抵抗しないと強引に童貞を奪われかねない。

 そんな俺の必死の抗弁は、彼女たちに一定の効果をもたらしたようだった。


「ま、まぁ……あたしも無理やりってのは望まないけどさ……」

「ひ、ひなたは、そ、そういうのもいいと思うんですがっ……」

「面倒くさい男ですね」


 三者三様の反応が返ってくる。まつりがいちばん常識的なリアクションだ。他は絶対にズレてるっ!

 と、とにかく、あと一押しだ。


「そうだ。その……、俺とつき合ってみて、本当にその……子供がほしいっていうのなら、考える。いや、できれば学校卒業して、就職してからがいいんだがっ……てか、俺、この村に永住せねばならんのか?」


「……まー、できれば早く子供ほしいんだよね。この村、このままじゃ本当に壊滅しそうだし」

「わ、わたしは……はやくサッカーチーム作りたいですっ……」

「ちなみに、この村のみんな、けっこうお金持ってますよ。凡人さんの十人や百人、一生養えるレベルです」


「い、いや……そんなヒモ生活というか……俺、情けない人間すぎだろう、それ。子供作るだけの存在って」


 一生ニートで、子作りだけって、どんな堕落・退廃した人間だ。そんな駄目人間になることは、俺の美学に反する。


「……蜜蜂の子作りを知ってますか?」


 そんな俺に対して、あずささんが真剣な表情で話し出す。


「女王蜂と交尾するためのオスは、ふだんは働かないんです。メスの働き蜂が働いている間は巣にいて、ご飯も彼女たちから食べさせてもらいます。そして、オスたちが唯一存在価値を持つのは、女王蜂と交尾するときだけです。つまり、オスは交尾のためだけに生きているといっても、過言ではありません」


 なぜいま、そんなことを俺に……?

 疑問を浮かべる俺に、あずささんは、ずいっと顔を近づけてくる。


「そして、運良く女王蜂と交尾できても、そのオスは生殖器が抜けなくなり、最後には下半身が破壊されて死にます。で、残りの交尾できなかったオスは巣から追い出されて、ほとんどが餓死します。子作りを舐めないでください」


 なんか微妙に的が外れている気もするが、殺気にも似た迫力があった。怖い。なぜか、怖い。こんな話題をしているというのに。


「それにですね。全国各地の神社に、どれだけ男根や女性器をかたどったご神体があると思っているんですか?」


 ああ……たまにネットで話題になっているよな……。


 奈良の飛鳥坐(あすかにいます)神社とか、伊豆の「どんつくまつり」、川崎の「かなまらまつり」とか……って、なんで、俺そんなこと知ってるんだ。


「……性的なものをタブー視する。シモネタをくだらないものとして排斥して、子供から遠ざける。イカくさいものに蓋をする。明治以来の西洋の価値観によって、それまでの性におおらかだった日本文化が破壊されてしまったのです! でも、田舎には連綿と古きよき日本古来の性文化が残されてきました。……しかし、それさえも、ここ昨今は途絶えてきてしまっている……」


 忸怩(じくじ)たる思いがあるのだろう、あずささんの表情はどこか悔しそうだった。


「わたしの神社も、代々性器をかたどったものをご神体としてきました。ですから、性というものを……子作りというものを、くだらないものとして切り捨てられるということは許せないんです」


 ……本気だ。そう感じた。


 確かに、そう面と向かって言われれば、確かにそうだ。俺はどこか子作りや下ネタを恥ずかしいこととして扱っていたかもしれない。


 そうだ! これは、神聖な行為なのだ! 子作りもシモネタも神聖っ! 

 ……し、神聖……?


「……って、なんかやっぱりズレてる気が!」


 危うく洗脳されるところだった……。


「あーもうっ、とにかくわたしたちとつき合いなさいよ! それから考えればいいでしょ!? 論より証拠、理屈より、実行!」


 くっ、ここで流されるのは危険だ……。しかし。


 暇を持て余していた俺としては、好都合ともいえる。


 こんな美少女と一夏の思い出を作れるだなんて、人生最大のチャンスじゃないか。なにをネガティブな気持ちになることがある。……というか、一夏どころか、このままこの田舎に死ぬまで監禁されそうな悪寒もするけどっ! 本当はこんなやばいところから、一秒でも早く逃げ出すべきなのかもしれないけどっ!


「お……おーけー、わかった……。とにかくまずは紐を解いてくれ」


 ……ともあれ、まずはこの拘束状態をどうにかしないと、ナニもできない。いまは穏便にコトを運ぶのが身のためだ。


「わかりました。それでは……しゅるっとな」


 あずささんが紐を引っ張ると、嘘のように簡単に拘束が解けた。

 よし……これで、ようやく俺は自由を取り戻した。まぁ、……相変わらず三人に囲まれている状態だけど。


「そ、それじゃ……えーと、まずはどうしましょうっ?」


 ひなたちゃんがもじもじしながら、俺のことを上目遣いで見つめてくる。えらい破壊力だ。そっちのケはなかったと思っていたが、これでは世界の潮流に逆らって、ロリコンになってしまう。でも、源氏物語だって、幼女さらって養育した挙句に強引に処女を奪って妻にしてたけどな。光源氏、変態紳士すぎる!

 ……ああ、やっぱり日本って、HENTAIの国だったのか……。源氏物語って見ようによっては、エロゲーそのものだもんな。女性キャラに手出しすぎっ。しかも、義母まで攻略しようとしてるし。


 そもそも、某神話の兄妹だって……もろに近親相姦話だしな。凹んでるところと、凸ってるところをくっつけてみるって、もろにシモネタじゃないか! 


 やはり、妹ものが絶大な人気を誇っているのは、古代神話以来、日本人が連綿と受け継いできた遺伝子なのかもしれない。

 だから、俺は胸を張って言える。俺はロリコンで妹好きだ、と――


 ……って、待て待て待て待て! セルフ洗脳から覚めた俺は、慌てて頭を振る。危ないところだったぜっ!


「と、とにかくまずは……散歩しようか」


 デートというには、まわりにナニもなさすぎる田舎だ。ただ、自然だけはある。都会の窮屈で、排気ガスくさい世界に辟易していた俺としては、この山々の連なる壮大な風景と、どこまでも澄み渡った空気はご褒美だ。


 ちなみに、いまいる場所は、神社の客間というか……社務所の隣にある一室だ。神社は階段を六十九段登ったところにあるので、見晴らしがよい。ちなみに、神社名は「子種(ししゅ)神社」と石柱に彫ってあった。


 まず最初に無人駅に降り立った俺は、まつりとその母親の乗る車に迎えに来てもらった。そして、民宿に荷物をおいてから、この神社まで歩いてきたという経緯がある。まさか、いきなり美少女三人に迫られるとは思っていなかったけどな!


「んー、じゃあ、限界村巡りといくかー」

「お外でするんですか?」

「しょうがないですから、お遊びに付き合ってあげます」


 本当に俺は、この三人と健全な付き合いを育んでいけるのだろうか……。あまりにも惜しげなく問題発言をしすぎな気がするのだが……。


 ま、まぁ……まずは本来の目的、限界集落体験入村を楽しもうじゃないか! 細かいことをそれから考えよう。


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