女上司って表現、エロいよね(前編)
「ちくわでオ○ニーすれば、終わった後食べられる一石二鳥じゃない?」
「こんにゃくもそうですね」
「オ○ニーした後の食事はおでんで決まりだね」
「そうですね」
「あんたたちねぇ……」
〜〜
私は、渡辺小太郎くんの幼馴染、斎藤菜々子。
身長は百五十七センチ。髪はショートボブ。色はもちろん黒で、服装はしまむらとユニクロのハイブリッド。
小太郎くんとは、昔よく遊んだ。さすがにもうこの歳になると、遊ぶことはなくなったけれど。
そこそこ仲良かったと思う。でも、小太郎くんはそうは思ってなかったみたい。
だけど、だけど私の方は、今でも
小太郎くんのことが、好き。
〜〜
「おかしいと思わない!?」
「はい、思います」
今日も私は後輩に向かって、怒りの全てをぶちまける。この子は四つくらい年下で、入社した時からずっと仕事ができない。本部チーフの私をいつも困らせる悪魔だった。けど、こうしてストレスをぶつけても嫌な顔一つしないから、それは感謝してる。
「だって、菜々子さんは、そのWくんのことを思って、チョコレートを作ったんですもんね」
「そうなの。それなのにあいつ……」
怒りがふつふつとこみ上げてくる。思い出すのは十年も前の屈辱。小太郎くんに手作りチョコをあげた、あのバレンタインデー。
「ほんっと許せないですそれ!」
「そうよ……ね?」
「はい!」
「……あの、あなた、誰?」
「あっ、私は風香ちゃんのお友達の、草薙凛子です。御社の社長にはいつもお世話になってます」
「そ、そうなんだ……」
風香には友達なんていないと思ってた。だからこうして、二人で、食堂でお昼ご飯を食べようとしていたのだ。
うちの会社の食堂は、一般の人に向けても開放している。だから、特に問題はないけれど、引っかかる点が一つあった。
「えっと、凛子ちゃん?社長と知り合いなの?」
「はい。社長はよく赤ちゃんプレイを頼まれますね」
「……ん?」
「赤ちゃんプレイってなんですか?」
「うんちょっと待ってね風香。とりあえずこの凛子ちゃんとは縁を切って」
なんてこったい。
この子、社長の贔屓の女の子だったんだ。
これは社員にあまり知られたくない。社長の性癖がバレると、巡り巡って私の給料が下がるのだ。
私は凛子ちゃんと風香の手を引き、食堂の一番人目につかない角っこへと座らせる。
「あの、凛子ちゃん。失礼な質問だけど、常識はある?」
「ありますよ。ちゃんとゴムはつけます」
「すごい非常識な回答」
「菜々子さん。草薙さんはすごく上品で繊細なひとですよ」
「少なくとも上品ではないわよね」
この子たち、いつ知り合ったんだろう……。風香はまだ帰ってきてそんなに経ってないのに。
「あっ、それで菜々子さん。さっきの話の続きは?」
「あぁうん……もういい」
「菜々子さんのテクがなくて男の子を満足させられなかったって話ですよね」
「あってるけどあってない」
どうせ小太郎くんは、うまいチョコを作ったところで、同じ結果だったと思う。
……はぁ。
「溜息なんてついちゃダメですよ。婚期が逃げます」
「幸せだけで勘弁してよ」
「あれ、菜々子さん。私が向こうに行く時、結婚間近だって……」
「風香、あなたが仕事できないのはそういうところだよ」
風香は焦ってメモ帳を取り出し、今の会話の内容をメモし始めた。絶対意味ないと思うし、メモ帳の端の血痕が気になるからやめてほしいんだけど……。
「まぁその、それで、私のチョコをコンビニのゴミ箱に捨てたWくんは、後日チョコの感想を訊いた私に対して、美味しかったって嘘をついたの」
「信じられませんね!嘘つきは童貞の始まりです!」
「何の関係性もないでしょ」
まぁどうせ、小太郎くんは今も童貞だろうから、あながち間違ってないんだけどね。
「ちなみにそのWくんとは、今でも連絡を?」
「取ってない。そもそも幼馴染とは言っても、年が7つくらい離れてるからね」
「えっ、あっ」
「ちょっと、何かを察するのやめてよ」
十年前にチョコを渡した……。それはつまり、私は高校生。小太郎くんは小学生。引かれるのも仕方ない。
「痴女ですね」
「もっとマシな言い方ない?」
「あの、そろそろ何か食べませんか?食べられる時に食べておかないと、戦えません」
「いい加減こっちの感覚に戻ってくれない?」
私たち三人は、食券を購入し、列に並ぶ。休憩時間はあと少し。もう喋っている余裕はないだろう。
ふと、食堂のカレンダーが目に入る。
……そっか、バレンタインデーは、明日なんだ。
「あっ、社長に作るチョコの材料、買わなきゃ」
「凛子ちゃん頼むから、公共の場では何も発言しないで」
午後からも頑張って働こう……。
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