第51話 惨劇

「開け……」


 俺が閉じている大きな門に触れた瞬間、両開きの鉄の塊はひとりでに開いた。


 いくつかの防衛用扉が開く。


 それを見た衛兵が近寄ってくる。


「おい、おまえどうし……」


 言葉を終える前に、衛兵の首をはね飛ばした。



 王の間の扉の前に立つと、流れ作業のように扉に触れて命令する。


「開け……」


 俺は3人と騎士たち、そして勇者たちがいる王の間へと入っていった。


 中に入ると、最初にモニカが気づいて俺に近寄ってきた。


「お兄ちゃん、大丈夫でしたか?」


 そういって俺の手を取ろうとした瞬間に、モニカの右手を切り飛ばした。


「ぎゃあああああああああああああ!!!!」


 それに気づいた男の騎士が叫んだ。


「おい、お前何してやがんだ! お前の仲間だろ!!」


 俺は騎士の言葉を無視してゆっくりと魔王メアリスへと歩み寄り、すぐ目の前で立ち止まった。


「死ね!」


 俺はメアリスの首を斬り飛ばした。


「きゃあああああああああああああ!!!!!」


 女の騎士は悲鳴を上げて、メアリスのもとへと駆け寄った。


「ちょっと、あんた何やってるのよ!」


 そういった女の騎士の首もはねた。


「どうし……たん……スよ」

 テンションの高かったフィーもさすがに言葉を上手く発っせずに俺を凝視していた。


 棒立ちのフィーへと歩き、単純作業をこなすように首をはねた。


 その瞬間、メアリスが魔法を発動させた。

 

「そういえば、不死だったか……。モニカたちも不死に変えたか?」

 

 男の騎士が魔法を発動させて首を修復していく。

 床に血が残ったまま、モニカとフィー、斬られた皆が立ち上がった。


 だが無視して、残ったディビナの方へと俺は歩いた。


「死ね」


 ディビナの首から上が飛んだ。



 いつの間にか、俺を取り囲むようにして騎士たちが剣や槍といった武器を向けていた。


 大きな剣を構えた騎士の一人が叫んだ。


「何をやっているんだお前! 武器を捨てて投降しろ!!」


 元クラスメートの勇者たちも俺にいつでも攻撃できるように体制を整えていた。


 モニカは心配そうな表情で俺を見ていた。

 そして思った。なんて白々しいのだと。ここまで演技されたら誰もわからない。

 決して俺がバカだからではない。


 俺は悪意を向けられることに慣れていたが、好意の裏に隠した悪意には疎かった。

 だから、その裏に潜んでいる本音に気づくことができなかった。


 再び魔王メアリスへと妖刀を構えて走った。

 踏み込むと剣に交差するのは男の騎士の剣だった。


「やらせねえ!」


 男の騎士は吹っ飛ばされて地面を転がった。

 俺は冷酷に告げた。


「邪魔だ、どけ」


 女の騎士も震えながら、メアリスを庇(かば)うように立ちふさがった。



「い、いやよ! あんた、馬鹿なことしてないで正気に戻りなさいよ!!」


 俺は女の騎士を無視して、妖刀でメアリスに斬りかかった。


「やらせねえよ」


 男の騎士が霧影で目の前に出現して、メアリスに刃が届く一瞬前へに剣で防いだ。


 そのまま妖刀に力を込めて騎士を吹き飛ばした。


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