第14話:大質量転移

 だいたい、魔物が突然住み着くなんておかしいんだ。

 ダンジョンの魔物はめったに外へと出てこないと聞いているし、しかもこの数の魔物が一か所に群れを構築して統率されたように物資輸送を狙って襲うなんてあまりにも偶然過ぎる。

 あいつが、ダンジョン(最近できて川をせき止めたダンジョン)から、ここへ連れてきた……、と考えれば辻褄が合う。


 青年は魔物たちに命令を出す。


「行け!」


 その声に従って、俺たちへと攻撃するつもりだ。

 テイムのスキルか、それとも何か魔法で動物を操るものなのか……。

 

 とりあえず、モキュを武装形態に戻して、俺はモキュでは厳しそうな鷹や蛇のような魔物を排除することにした。



 ――数分後。


 魔物をすべて殲滅し終えた俺たちは、青年を見据えた。


「驚きだ……出直すかな」


 地面の周囲が魔法陣の模様を浮かべて光り始めると、どこかへ転移しようとしているらしい。

 魔法の予備動作みたいなものか。


 いや、逃がさないよ?

 空間操作・強制でここ一体の空間に区切りを入れて枠を構築し、その中の空間の変化一切を封じた。


 光が治まっても、青年が転移できないことに気づいて、始めて驚きの表情を見せた。


「なっ!」

「お前は俺の命を狙ったんだ。とりあえず、俺の前に二度と現れないでくれ」


 そういって、空間転移できずに地面に棒立ちしている青年へと、石ころを顔を中心にたたきこんだ。

 顔に恨みはないが、なんかむかついたんだ……。

 

 その後、完全に息絶えたのを確認してから街道をモキュと飛び立った。

 上空から道の先を見ると、道を複数の商隊が向かってくるのが見える。

 なんとか、物資・食糧輸送の障害は事前に排除できたようだ。


「にしても、あの金髪野郎……、これを狙ってやがったんだな」


 俺はダンジョンのあるという北の上流へと向かうことにした。


 

 ダンジョンはすぐ山脈付近にある洞窟が入り口となって、近巨大構造物となって川の水源をせき止めているようだった。

 水は流れを変えて、別の場所へといくつも川をつくりだしていた。


 俺はまず、ダンジョンの中に入って、モキュと一緒に魔物を出来るだけ血祭りに上げてステータスを上げる。

 その後、一番地下へと問題なく到達し、またもや大きな扉のあるダンジョンの部屋へと入ることになった。


「なんだこれ?」


 またしても、白い布切れが落ちていた。

 集めたら何かもらえるのか?

 とりあえず、ポケットに布を突っ込んでダンジョンを離脱した。


 さて、あとはダンジョンを取り除くか。


 ステータスではすでに『物質支配』のレベルが4を超えている。

 物質転移はLv.6、他の操作・強制もLv.5だ。

 レベルが上がったことで追加記述されていた項目もあった。

 それが操作・強制の【物理操作・強制――質量制限解除・距離制限解除】の二つだった。

 確認ついでに使ってみることにした。

 邪魔なダンジョンには直接隕石でも叩きこむつもりだったが、これならもっと楽に川の構築ができる。

 

 まず、空間操作でダンジョンを区切り、そのまま中身丸ごと転移させた。

 一体、何千tあるのかわからない重量のダンジョンも転移できるようだ。


 転移先は俺たちを召喚したアルカリス王国の王城、その真上だ。

 これから巨大物を転移させるときはあそこをゴミ捨て場にするつもりだ。


 なくなったダンジョン跡には、地面の空洞ができて一気に地面が地下へと崩れていった。

 まずは物質操作で土砂を元に戻し、水流操作で元あったはずの川の流れへと戻してやる。


 これで一通りが完了したはずだ。

 俺はモキュと一緒に村へと戻ることにした。

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