第5話:支配範囲を確かめる
『物質支配』がどこまでのものなのか。
確かめてみることにした。
・【物理無効】 Lv.1
斬撃無効
打撃無効
刺突無効
熱無効
麻痺無効
電気(磁気)無効
水無効
毒無効
・【物理操作・強制】Lv.1
物質操作・強制
空間操作・強制
光・電磁気操作・強制
重力操作・強制
水流操作・強制
・【物理召喚】Lv.2
物質召喚
物質転移
まず召喚と転移から。
すると、手に石を召喚し、それをはるか先の壁まで転移させることができた。石の重量や大きさ、出現する高さや角度も変えて見るが、このダンジョンの部屋の範囲くらいなら問題ないらしい。
次に、『物理操作・強制』。
試しに手に召喚した小石を念力のように壁に向かって飛ばしてみた。
ズドッと音がして、壁にへこみができた。
これも何度か繰り返して、音速を超えられるか?とか実験してみる。
最終的に、空気抵抗?で火を纏うレベルまで加速した石が、壁を突き破った。
「す、すげ~~~!」
閉じ込められていたみたいだけどダンジョンの壁もこれなら関係ないな。
Lv.1だから、まだ速さの限界点があるのだろうけど、レベルが上がる必要なんてないくらいすごかった。
実験は、『空間操作・強制』『光・電磁気操作・強制』『重力操作・強制』『水流操作・強制』という記述のあった順番に試した。
何ができるのか興味があったが、こんな感じになった。
空間はアクリル板のような四角いキューブのように、空間を区切ることができるみたいだ。
空間というだけでは広いから、自分で四角い枠を決めて、その中を支配すできるようだ。
空間の中のわずかな動きや空気の対流までも肌で直接感じることができる。だが、それだけではなく、能力を使ったことで頭の中に能力の具体的なイメージが流れてきた。
「なるほど、空間を支配できるということは、その空間内でおきるあらゆる事象の優先順位・支配権が俺に一任されるわけか」
たとえば、魔法の攻撃は発動を無力化できる。弓矢での攻撃なんかは、そのすべての方向速度、威力をコントロールできるわけだ。
次に光を自由に発生・収束・屈折させたりしてみた。
電気はその威力を変えて放ったりもできた。(あと電磁気の「磁」は磁力だった)
重力は地面がへこむくらいに重力を強くすることができた。
水流操作というのは、まず水を召喚して、それを操作するというものだった。
渦巻ぐらいは普通に作れた。これは物質を操作すると言うよりも空間と物質の両方、流れみたいなものを動かす感じで、物質操作とはちょっと違った。
そして、今度は、自分に向かってそれを使う番だった。
『物理無効』を試すのだ。
無効というからには、これらをすべての攻撃を無効できるはずだ。
自分に向けるのはちょっと怖かったが、さっき死にかけたほどではない。
石ころの弾丸も電気も水もだ。麻痺はまず電気が効かないから確かめられなかったが。
毒は物質召喚で、ひ素をつくりだして飲んで確かめることができた。
鉄でつくった剣で皮膚を切ろうとして見るが、出来ない。
打撃・刺突も剣でやってみるが、まったく俺には効かない。
ところで水無効って何? 溺れないとか? わからんし、これは保留だな。
ただ、最後に一つ気付いた。
これまで試したものが生命体ではないものばかりだ。
だが、最後の一文は、『有機生命体を除く』とある……。
俺は、試しに自分のこぶしで腹を殴ってみた。
「ぐへっ」となってものすごい痛みがあった。
手は有機生命体の一部ということのようだ。
召喚を使って木や紙も生み出せなかった。
つまり、純粋な肉体攻撃、それと有機生命体(木とかそれを武器にしたものである木のムチや棍棒、矢など)の直接攻撃を何とかできれば、俺は無敵だ。
そして、それは少し考えれば出来ることだ。
バトル漫画かなんかで読んだいざという時のための防御。それは周囲にもう一枚、防御用の物質を纏わせることだ。変えても違和感のない範囲で、皮膚の表面を『炭素』で固めた。
不意打ちの一瞬さえ乗り切れば、後は誰であろうと物理攻撃の応酬で殲滅は十分に可能だ。
俺は壁に穴のあいた場所から、この支配の能力を使ってこのダンジョンの中を探検することにした。
魔物を倒して、能力の数値をもうちょっと上げておきたい。
「はははっ……なんか楽しくなってきた。生まれてきてまた楽しいと思う日が来るなんてさ」
ついでにあの裏切り者どもを捻り潰しておこう。
俺を騙した奴も馬鹿にした奴も、俺に害を及ぼすことはもうできないはずだ。
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