動物園は私の飼育場所

嶽 城

第1話プロローグ

早く家に帰りたいな...

大きく伸びをし、あくびをした。

情報処理なんかすぐに終わるから少し寝ようかな。

「佐藤さん、話があるんだが。」


課長が呼んでる。行かなければ。はぁ。眠たい。




いつも通り、椅子に座った。

話とはなんだろうか。

「この情報処理科に入って君、何年になるんだっけな」

「まだ、二年ですが...」

「仕事内容がわかるようになってきた時期だね。」

「課長、用とは?」

課長はバッグから何やらファイルを取り出し、テーブルに置いた。

「ゴホン、嵐野動物園」

「動物園...ですか?」

情報処理と、動物園...何も関わりがないように思うが。



「君は来月から動物園で働いてもらう。」

動物園?なんで私が動物園なんかに行かなければならないのだ。

「何でですか?詳しく教えてください。」

「まぁ。実のところを言うと、君をリストラしたんだ。」

リストラ...聞きたくない言葉だ。

「職を勝手になくし、困らせてはいけないと思ってね。弊社の観光事業課で、募集している動物園飼育員を君にやらせようかと。」


実のところ、動物は少し苦手な方。五年前に犬に噛まれ、そこから少しトラウマなのだ。


「課長、私が動物園に行って、何をすれば...」

「佐藤さんは、なにか動物を飼ってたりとかない?」

「ありませんね」

「ふむ。わかった」

わかったとはなんだ...私にはさっぱり理解できない。


「まぁ。大丈夫だよ。心配ご無用。長期出張だと思えば、気楽なものさ。お給料の方も少し高めだよ?いいでしょ?」


私はファイルに目をやった。

そこにはアフリカの大草原らしきところが写っている。オスのライオンとメスのライオンがこっちを見ている。


『ようこそ。嵐野動物園へ。』

ど、動物園か、動物も大人しいだろうし、まぁ、少しくらいいっか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る