君じゃなきゃだめ。ー9ー


二年生二回目の試験である期末試験は愛未や和樹のおかげで赤点もなく終了させられた。


夏休み中盤、最近始めたアルバイトで貯めたお金で私と和樹は旅行へ。


地元からかなり離れた有名な遊園地で遊んだ後は近くの旅館に宿泊する事になっている。


和樹と私が行く初めての旅行だ。


「ごめんね。気を遣わせて。京都のが良かったよね?」


「いえ。京都はこれから透子さん、修学旅行で行くし、俺も来年行くからさ。それに!遊園地!人生初だからめちゃくちゃ楽しい!ジェットコースター最高だった!ちょっと休まったらもっかい乗ろう!」


「うん!良かった。和樹は本当人生初が多いもんね」


「うん。遊園地はいくらでも行きたいな」


和樹、遊園地すごく気に入ったみたいで良かった。


ジェットコースター、すごく好きなんだなぁ。


「あのコーヒーカップ乗る?」


「はい!ねぇ、透子さん」


「ん?」


「俺の初めてたくさん貰ってくださいね?」


和樹は私を見つめ、言った。


「な、なんか意味深!!」


「えー?何?やらしい事考えたり?透子さん、エッチ」


「ち、ち、違うよ!」


「動揺してるし!」


やっぱり和樹には振り回されがちだ。


いつも私を動揺させる発言をする。


私は和樹の前だと先輩の立場ないよっ。


「わあ!めっちゃ回るー!すっげぇ楽しい!」


「か、和樹!回しすぎ!」


「えー?めっちゃ楽しいじゃないですか!これくらいのが!」


乗り物にはしゃぐ時の彼はいつもより幼くて可愛らしい。


「め、目が回るっ」


「あはは。回しすぎちゃいましたね」


コーヒーカップを降りると、私はふらふらになる。


「もう!」


「何事もスリリングな方が楽しいですから」


この子が言うと、説得力あるなぁ。


常にスリリングな事を私にしてくるし。


「あっ!透子さん、あれっておばけ屋敷じゃないですか!?」


「え?あ、うん」


「素晴らしくスリリングじゃん!行こ」


「ま、待って!私、怖いのは・・・」


「なら、尚更行かないと!びびる透子さん見て興奮しよーっと」


「こら!このドSーっ!!」


もう、どうしよう!!


おばけ屋敷とか無理ーっ!



「わっ。いかにも映画に出てきそうな不気味な日本家屋!」


「か、和樹ーっ!や、やっぱりやめよ?」


「大丈夫です。俺が透子さん守るし。行きますよっ」


「ちょっとー!!」


和樹に引っ張られ、私はおばけ屋敷へ。


ガタガタと風で窓ガラスが揺らされるような効果音とあちらこちらから聞こえる叫び声、破かれた障子や赤い手形。


それだけで私の恐怖はヒートアップする。


「和樹、早く出たいよっ」


「全然怖くないですよ!」


「でも、ここ怖いって有名だし・・・きゃあっ!」


いきなり障子から手が出てきて驚いた私は和樹に抱きつく。


「大丈夫ですか?」


「び、びっくりしたよ」


「もう涙目だし」


「だって、本当怖・・・きゃああ!」


私は井戸から人が出て来て和樹に強く抱きつく。


「やだ、やだ、やだ!怖いよぉ!無理!和樹・・・」


「大丈夫ですよ。ほら、俺の腕に捕まってて」


「う、うん」


「もう!本当透子さんは可愛いな」


「和樹は怖くないんだ?」


「俺、基本怖い物無いんで」


「怖い物ゼロなの!?」


「透子さんを失う事くらいかな。怖い事は」


「わ、私はずっと和樹の側にいるよ」


「透子さん・・・」


「きゃああ!また出たっ」


「もう!透子さん、大丈夫ー?」


ねぇ、和樹。


私も同じだよ。


私も和樹を失うのは怖い。


ずっとずっと一緒じゃなきゃ嫌なんだ。


遊園地で乗り物を全制覇すると、すっかり夕方になってしまった。


「そろそろ旅館へ」


「う、うん!」


私達は旅館に向かう。


「夕飯、舟盛り出るんですよ」


「わっ!楽しみー!!たくさん騒いだし、お腹空いちゃった」


「俺もお腹空いちゃった。でも、旅館着いたら先に風呂入りません?まずは汗を洗い落としたい」


「うん!露天風呂もあるんだよねー!温泉とかワクワクするー!」


「ふふっ。特別な温泉らしいですよ?」


「特別?そういえば、和樹が手配したんだったね。私、温泉の詳細まで見てなかったなぁ」


「それは入ってからのお楽しみ」


「えー?」


何が特別なんだろう?


旅館に着き、荷物を部屋に置くと私達は温泉へ。


やっぱり温泉って気分が高まるなぁ。


そういえば、ユキちゃんに言われたなぁ。


二人で旅行行く時は覚悟しとけって。


今日、ちょっと色っぽい下着にしてしまった。


今更だけどやっぱり地味なのにすれば良かった!


気合い入ってる感が出ちゃう!


そうなってもおかしくないんだよね、私達。


温泉は私以外全然人がいなかった。


私は頭と身体を洗い、湯船に10分ほど浸かると、露天風呂へ。


やっぱり露天風呂が一番テンション上がるよね。


だけど


「透子さんっ」


えっ?


ええっ!?


露天風呂には和樹が。


私は身体の前に当ててただけのタオルを慌てて体に巻きつける。


「な、何で!?」


「混浴なんですよ、この露天風呂」


「へ、へぇ」


とりあえず私は露天風呂に入るも、和樹からは離れる。


「遠くない?透子さん」


「や、やっぱり恥ずかしいしさ」


「透子さん。言ったでしょ?俺の初めて貰ってって」


「初めて?」


「そ」


そう言うと、和樹は私に近付いて私の唇を奪った。


「か、和樹・・・あっ・・・だめっ・・・誰か来ちゃうかも」


「だーれも来ませんよ」


和樹は私の身体に巻かれたタオルを外し、私の胸元にキスをする。


「透子さん、透子さん・・・」


「あっ!やだ・・・そ、そんなに揉まないで・・・和樹・・・だ・・・め・・・」


「気持ち良いって顔してるのに?透子さん」


「あっ!やっ・・・恥ずかしい・・・」


「透子さん。可愛い。もっと気持ち良い事しましょうね」


「も、もう!!和樹のバカ・・・」


和樹は私に優しいキスをした。


こんなにも愛しくてこんなにも失いたくない恋は初めてだ。


ねぇ、和樹。


私、和樹を好きになれて本当に良かった。


ずっと私を好きでいてくれてありがとう。


私も貴方が本当に本当に大好き。


私、和樹とずっとずっと一緒にいたい。


私は和樹じゃなきゃだめみたい。


もう和樹が生きてたって意味が無いって思う事が無いように私が貴方を支えます。


和樹を愛します。


私が幸せにする!


だから


ずっとずっと私の側にいてね。


ありがとう、大好きです。


「透子・・・透子・・・大好き」


和樹は布団の中で私の名前を優しい声で呼び続ける。


「そんなにたくさん名前呼ばれると、照れる・・・」


「ずっとこう、呼びたかったから。許してよ?透子」


和樹は私の髪に優しく触れ、そう言うと、私に深いキスをした。


和樹に名前を呼ばれると、たまらなく嬉しくなる。


名前を呼び捨てで呼ばれただけなのに嬉しくて幸せで私は涙が出た。


私はこの恋を一生大事にし続けたい。


絶対に失いたくない!


そう強く願い、彼に抱かれながら眠りに落ちた。




ーENDー


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