冒険者養成学校〜入学〜
魔法迷宮都市エイヴィーズ北部に置かれている冒険者養成学校。
冒険者養成学校は冒険者ギルドの支援の下に運営されている。
そのため、その門戸は広く開かれている。長く活動出来る冒険者が増えれば、迷宮の探索は進み、新たな利益を冒険者ギルドへもたらすからだ。
そういった思惑もあり、冒険者になるための敷居を低くするためなのか、入学金はタダだった。
授業や実習で使うものも、消耗品はともかく、支給される。
こうなると、入学希望者はとても多くなる。
ただその点はアンナさんが冒険者ギルド側からの口添えもあって、クリアしている。
入学式には間に合わなかったが。
冒険者養成学校。
晴れて入学を果たした俺は、他の新入生達と共に、校内の大広間へ集められていた。新入生は200人程かな?殆どの人が皮鎧を着けた軽装戦士だ。他にも、魔術師が着るローブを着けている人もちらほらと見える。
周囲を見回して居ると、扉付近がざわざわし始めた。
周りの人たちが言うには、冒険者ギルドのギルド長らしい。冒険者ギルドで手伝いを2年間していたけれど見た事は一度も無かったな。
そのギルド長が前の壇上へ上がると、喋っていた人達が一斉に騒ぐのをやめた。シーンっと聞こえそうなくらいの静寂の中でギルド長は話し始めた。
「新入生の皆さん。始めまして。私は冒険者ギルドの長をしているギュンター・レイモンドです。まず皆さんに伝えておきたいことが一つあります。
冒険者は決して冒険をしてはいけない。
この言葉は冒険者ギルド発足の際から伝えられているものです。
冒険者は常に、慎重かつ冷静な行動を求められます。目先の欲に捕らわれず、最適かつ最善の行動を行う。
それが冒険者としての最大の素質だと言えるでしょう。
ここに居る生徒全員がこの言葉通りのことを実践し、いずれ冒険者として大成することを祈っています。
最後に、新入生諸君!入学おめでとう!君達の冒険者としての未来は今開かれた!」
あの後、様々な人が話しをしていき、集会は終わった。
今からは、能力と大まかな素質の測定をする。
能力は現在のレベルとステイタスを。素質はステイタスの伸び代や今後獲得出来る可能性がある
この測定で殆どの人が自分の職業を決める。
筋力や生命力が大きく伸びる人は前衛の盾持ち戦士や両手剣戦士に。敏捷と器用が大きく伸びる人は技術を得てシーフに。魔力と感覚が大きく伸びる人は後衛で魔術師や僧侶に。
無論、適性が余り無くても成りたいものにはなれる。ステイタスの成長が少ないだけで、技術を磨き、レベルを上げれば、充分通用する実力を得られる。
ただ、そこまで到達するのには長い時間とそれこそ、石にも齧り付く程の努力が必要だそうだ。
自分にはとても出来そうにないな。自分は自分。それで良い。
「次。ワタル・コンドー!」
「あ、はい。今行きます!」
自分の番が来た。……流石に緊張するな。ここで自分の未来が決まるんだ。緊張するなって方が無理だろう。
「ここに座って、この水晶玉に両手を乗せるんだ。そうすれば、測定出来る。」
言われた通りに両手を水晶玉に乗せる。すると向かいに座っているローブを着た女性が何かを呟いている。
そのまま少し経つと突然、水晶玉に文字と数字が浮かび上がって来た!
「良し。浮かび上がったな。もう手を離して良い。」
手を離すと、魔術師であろう女性が水晶玉の文字を紙に写し取っている。書く量はそこまで多く無くて直ぐに紙を渡された。
「紙は貰ったな?そうしたらまだ時間が掛かるから、周りの生徒達と待っていなさい。」
近くの壁に寄り掛かりつつ渡されたを読む。
内容はこんなところか。
ワタル・コンドー
LV11
筋力 27
生命力 14
敏捷 21
器用 22
感覚 18
魔力 11
ここまでが現在のレベルとステイタス。全体的にバランスが取れていると思う数値が出た。筋力が高いのもギルドで力仕事が多かったからだろう。
次は素質。つまり、今後の伸び代だ。
筋力 高い
生命力 やや高い
敏捷 やや高い
器用 高い
感覚 普通
魔力 やや高い
……バランスが良い。ここまで個性が出ないことにびっくりだ!まあ低い項目が無くて助かったな。これなら色々なことが出来る。戦士でもシーフでも魔術師でも!。
「おっ。良いステしてんじゃん。」
誰だ?
後ろから聞こえた声に振り向くと、皮鎧を装備している少年がいる。
「そうかい?余り突出してるのは無いけど。」
「いやいや。バランスが良いのって羨ましいぜ。俺なんかこんなんだぜ。」
彼が差し出して来た紙を見る。
アレン・ラーガー
LV13
筋力 34
生命力 28
敏捷 11
器用 8
感覚 5
魔力 0
筋力 理想的
生命力 最高
敏捷 少し
器用 少し
感覚 微々
魔力 皆無
獲得
精霊の加護 (生命力)
未獲得
危機感知
継戦能力
まさに脳筋といえるステイタスだった。
「なっ?バランスって大事だろ。」
「ああ。如何に自分が恵まれているか分かったよ。ありがとな。」
「おう!そういや名前言って無かったな。俺はアレン・ラーガー。よろしくな!」
「俺はワタル・コンドーだ。これからよろしく!」
アレンは中々に面白い奴だ。それはこの短時間で分かった。
俺達はもっと仲良くなれる。
というかなった。
そのまま二人で話しているうちに、全員の測定が終わったようで、次は武器の選択だ。
俺達は大広間を出て、中庭へと向かった。
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